第十一章    

「暑いな…」汗ばむ身体と共に起きた朝。
寝惚けたまま、自室へと向かい音楽を流す。
朝、起きてから携帯の電源を入れる事もなく只、音楽だけを聴いていた。
今朝はぽつぽつと雨が降っていた。
いつもの事だが、香水を纏い、煙草を吸う。
呼吸を整えるかの様になるべくゆっくりと。
昨夜、準備していた水を飲み干し、もう夏なんだな、なんて時間の
経過の速さに戸惑いを隠せなかった。
雨の音が段々と激しくなる中、私は音楽を止め雨の音に耳を傾ける事にした。
土砂降りになっていく雨の音を聞いていると、私は彼を思い出す。
何故なのかは不明だが。
身体を丸め、下を向き只大きくなっていく雨の音だけが私を包んだ。
すっかりと「過去」へと変わっていった彼との時間を思い出して、
彼から言われた「俺しかみなくていいよ」そんな言葉を思い出し、
久しぶりに彼のインスタへと目を通してみる事にした。
私へのフォローも外されていて、私は「またか…」なんて無理矢理に納得しようとし
私が知っていた頃の彼のフォローの数が増えている事に私は
「インスタはやっているんだ…」そう理解し、私以外の人を見ているんだな、と
私にdmをしてくれなくなった彼を想い、私は泣いていた。
雨の音が私の心を癒してくれている様に啼いている様に感じた瞬間だった。
随分と泣いた後に、私は下ばかり向いてはいけないな、と思い
煙草を咥え、上を向き煙草を吸った。
この先、「誰か」と出逢うのかは分からない。
それでも、私はきっと「彼」を忘れる事はないだろうな、なんて詰まらない事を
考え、今日は寝る事だけに徹底しようと決めた。
ほろ苦くも甘い「過去」へと思いを馳せながらベッドへと潜り込んだ私だったのだが、
雨の音のせいなのか、涙が止まらなくなってしまい私は身体を丸め、
嗚咽を抑える事なく、大声を上げ泣いた。
泣く事にも疲れ果てた頃、私は静かに眠りへと深く深く堕ちて行った。
何時間眠って居たのかは私には分からなかったが、ぼんやりと目を開き
時計を見ると、16時を少し廻っていた。
回っていない頭のまま私は「怒られない程度」の家事を済ませ、
風呂へと向かった。
温かくなると「幸せだな」と感じるのに、私は冷える様な行動を好む。
随分と眠ってしまっていたから、食事等採れる筈はなく、
パートナーも帰宅する18時頃になっていた。
私は紅茶を入れ、自室へと向かう。
パートナーの顔を見るのがとても嫌な日だった。
これから訪れるであろう「孤独感」に私は特に何とも思わなくなっていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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月は嗤い、雨は鳴く

彼からの連絡も途切れ、時間は無情に過ぎて行く日々にも慣れ、「孤独感」にもなんとも思わなくなっていく日々を過ごす主人公。

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投稿日:2024/05/07 03:54:48

文字数:1,062文字

カテゴリ:小説

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