タグ「初音ミク」のついた投稿作品一覧(30)
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【鏡音リン・レン他】祝・民族調曲コミュ一周年【告知】
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「どうしよう……」
体温計が示した値に、あたしは途方に暮れた。
レンが倒れるのなんて、少し前まではよくあることだった。自分が芸能界に入ったきっかけも、レンの代役だった。
別に珍しいことじゃない。
ここ二年くらい調子が良かったから油断していただけ。雨に降られたんだから、こうなって当然だ。
あ...【小説】wo R ld's end 12
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季節はもう移ろい、映画の撮影も始まっていた。
主題歌と劇中歌を、来年の映画公開に合わせて発売することになっている。
曲も歌詞も出来ていたけれど、まだ収録はしていない。
あたしが収録時期を先延ばしにした。
レンの声変わりのことがあるからだ。来年も同じ声だとは限らない。声が変わったのは分かるの...【小説】wo R ld's end 08
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「大丈夫、大丈夫」
何度も何度も、ただ無意味に繰り返される言葉。
ミク姉に抱きしめられた少女は、真っ青な顔をして震えていた。その理由すら、僕には分からない。しかし、少女がひどく怯えていて、ミク姉の声すら耳に入っていないことは分かった。
ミク姉は僕の存在に気付いたようで、少女の方を気遣いながらも...【小説】wor L d's end 07
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家に帰ると、他のメンバーの姿はなかった。
レンの靴はあったから、もう帰っているはずなのに。
ダイニングテーブルの上に、台本が置かれていた。あたしが、レンと一緒に主演の予定だった映画。
こんなところに置いておくなんて、わざとだろうか。レンはあたしに、読んでほしいのだろうか。
震える手で、その...【小説】wo R ld's end 06
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杖を地に突き立て、前もって村の周辺に描いておいた陣を浮かび上がらせる。
魔法とは、呪文と陣、すなわち言葉と図形を組み合わせて起こす奇跡のことである。
そう言うと難しそうに聞こえるが、なんていうことはない、ただ単に「自分が考えていることを言葉と図形で表現して、それを相手の思考に刻みつけてしまう」...【小説】wor L d's end 05
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「あぁもう! なんであたしが仕事ある日に限ってホームルーム長引かせんのよあの担任はっ!」
あたしは必死で走っていた。校門までの距離をこんなに長く感じたことはない。――そこ、マラソン大会のときの方が長く感じただろうとか突っ込まないでよ。
「リンちゃーん!」
校門の外で黒塗りの車が待っていて、その中...【小説】wo R ld's end 02
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「さぁて、始めるよ!」
中等部の吹奏楽部も、高等部の管弦楽部も、中高合同の合唱部も、大所帯でバリバリ活動している。そんな中で、何故に「歌唱同好会」などというこじんまりとした集団が、四畳ほどの部室で活動しているのか。
それは、この同好会の目的が、「歌手としてのデビュー」という大それたものだからであ...【小説?】CR学園歌唱同好会
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「ミク、ルカ!」
靴の音を高く響かせて、部屋の中へ入る。
「カイトはどこにいます?」
「んー? えっとねぇ……」
ミクが、その辺をきょろきょろと見回した。部屋の中にいるわけでもないのに、きょろきょろしても意味ないと思う。
可哀そうだから言わないけど。
結局、カイトは未だに、騎士としてこの王宮...【中世風小説】Papillon 終
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「何してるの!」
声が響いたかと思ったら、後ろから思い切り腕をひねりあげられて、俺は剣を落とした。
後ろを見ると、目を真っ赤にはらしたミク姉が、驚いたような顔をしている。
俺は、思わず笑ってしまった。
「何驚いてるの、自分でやっといて」
「だ、だって……」
剣を持っていた俺を見て、自殺すると...【中世風小説】Papillon 12
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無言で差し出された剣。カイトは俺をまっすぐに見て、いつもの穏やかな表情すら浮かべず、剣を持つように促した。
「ちょっと、カイト!」
ミク姉が走ってきて、カイトを止めようとする。だが、カイトはそれすら無視して、ただ俺を見ていた。
「何やってるの、二人とも! まだ、外に出ていいなんて言われてないよ!...【中世風小説】Papillon 10
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「っと、わぁっ!」
朦朧とした意識の中で、ミク姉の声をきいた。その直後に、盛大に転んだと思われる音と、何かが転がり落ちる音。
リンもミク姉も、何もない道で転べるような人だけれど、今回は何か持っていたのだろうか。
唯一自由に動く左手で、ベッドのカーテンを開ける。俺の部屋の床に、何故だか果物が大量...【中世風小説】Papillon 6
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「リン! リン!」
身体を強くゆすられて、初めて誰かがそこにいることを知る。焦点の合わない瞳で、翠を見つけた。
「ミク、姉……?」
周りを見回す。誰かが床に倒れていた。そのすぐそばに、カイトが立っている。カイトが誰かを倒したらしい。
でも、何故。分からない。あたし、何してたんだっけ。
「よかっ...【中世風小説】Papillon 5
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「わぁ、可愛いーっ! ほら、見て!」
並べられた商品を見てははしゃぐあたしに、げんなりとしてついてくるレン。
高熱にうなされているレンに無理やり、街へ出かける約束をさせて、今日ようやくのデートとなった。少し離れた場所を、何食わぬ顔してカイトが歩いている。一応、用心棒だ。
「なんなのレン、もっと楽...【中世風小説】Papillon 3
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君だけを見ていた、とか、君だけを守りたい、とか。
もうそんな、白々しい言葉しか思い浮かばない。それを証明するものなんて、もうどこにもない。
夢の中で、ただ君の姿を探していた。夢の中でくらいは、君の笑顔に会いたかった。
降り注ぐ光の中、噴水を浴びて、緑の絨毯に寝転がった日々。一日中、手を放さず...【中世風小説】Papillon 2
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あなたはもう、忘れてしまったでしょうか。二人でなら、何もこわくなかった頃のことを――。
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「ルカ姉! メイコ姉!」
あたしは、白い衣のすそが翻えるのも気にせずに走り、部屋に飛び込んだ。あまり品はないけれど、これでもこの王国の第三王女だ。
「ねぇ、レン見てない?」
部屋の中にいた姉二人...【中世風小説】Papillon 1
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「ねぇカイト、姫様知らない?」
二日酔いを理由に朝っぱらからまた飲んでいたはずのメイコが、ふらりとカイトの元に顔を出す。
「は? 何言ってるんだよ、ミクなら……」
カイトは首を傾げ、街の中央にそびえたつ塔を見上げる。その一番上から、夜の闇を切り裂くように放たれる二つの光。
今はもうきこえない歌...【小説】サーチライト 終
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気がつけば、誰かの腕の中にいた。朦朧とする意識の中、最初に見えたのは、金色の髪と白い肌。
「リン……?」
また彼女に助けられたのだろうか。ぼんやりと、歌うことも忘れてその顔を見ていると、金髪の少女は、そっとミクの頬に口づけを落とした。
「うん」
悲しいほど優しい声が、耳に響く。
急に意識が鮮...【小説】サーチライト 11
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役人たちが圧倒的に不利な状況になったわけではない。しかし、最初の炎が歌に消され、一度彼らは切り上げた。
「またすぐに来るだろうな」
ルカは、そう言いながら、物見台の上で見張りをしている。
昨日の炎で焼かれてしまった家々を見て、人々は落胆し、しかしまだ生きていることに感謝していた。この状況で感謝...【小説】サーチライト 10
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「うっわぁ、すごーい」
リンは素直に感心した。
感心すべきところではないのかもしれないが、あまりの金額に、そうとしか言えなかった。ミクの首にかけられた額。首、とはいっても、条件は生け捕り。よくも悪くもこの美貌なのだ。元ご主人様は、相当執着しているらしい。
「すごいって、リン……」
呆れた様子で...【小説】サーチライト 9
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いじけた様子で草をいじるミクと、そのそばで彼女を守るように立つリン。
「つまんないなー。街に来たんだから色々見たいなー」
先ほどまでと様子が違いすぎるミクに苦笑し、リンも同調する。
「ですよねー。あたしも色々見たーい」
しかし、ルカが危険な目にあった場合に合流して逃げるため、もしくはミクが見つ...【小説】サーチライト 8
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「わぁ……すごい」
フードを深くかぶったまま、ミクは感心する。街と呼ばれるような場所に訪れたのは、久々だ。その活気に、人の気配に、圧倒される。
「すごいすごい!」
隣にいるリンは、呆れるほど元気だ。そんなリンの首根っこをつかまえて、ルカがつばの広い帽子をかぶせる。
リン自身の過去も分からないし...【小説】サーチライト 7
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「つまり、こういうことですか。ミクさんとルカさんは、レン――あ、呼び捨てでいいですよね、を探している、と。そんでもって、彼の居場所はもちろん、現在の実年齢も外見年齢もよく分からなくって、唯一の情報はあたしの顔なわけですね」
リンの顔が情報、というのはよく分からないが、まぁリンによく似た顔、という意...【小説】サーチライト 6
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「それで、なんでこんなことになったわけ?」
長い桃色の髪の女性が、呆れた口調で言った。申し訳ありません、とミクは素直に頭を下げる。
はぐれてから五日後、ルカはちゃんとミクを探し出した。
水が調達できない状況だったら貴女死んでたのよ、と散々怒鳴った後、ミクを助けたリンに礼を言う、そこまではまぁよ...【小説】サーチライト 5
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幼いころに親とも別れてしまったミクは、自分の正確な年齢を覚えていない。
魔女狩り直前の友人たちは十歳かそこらで――にも関わらず、ミクだけ外見年齢も精神年齢も四歳程度だったから、「魔族」だとバレたわけだ――、権力者に囚われていたのが十年間くらい。
集落に来たとき、ルカが四歳かそこらだから、集落で...【小説】サーチライト 4
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ミクの目の前にいるのは、十年以上も前、数日間しか思い出のない金髪の子ども。当時から、おそらく二、三歳しか年をとっていない。
「レン……?」
金髪の子どもは、ミクが呼んだ名前を、不思議そうに繰り返した。高い声。
ミクはようやく思い出した、彼は――レンは、こんな声ではなかった。どこか似てはいるけれ...【小説】サーチライト 3
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歌姫が集落から消えて数日が経った。
「まぁいいんじゃないの、ルカが一緒なんだったら」
確かに、ルカが一緒に姿を消していたことに気付いた時は、カイトも安心した。ルカがすべてを知っていながらカイトたちに何の相談もしなかったことは納得がいかないが、ミクの性格を考えれば、下手に引きとめるよりは黙ってつい...【小説】サーチライト 2
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「メイコ!」
名前を呼ばれた女性は、不服そうに目を開け、暗い部屋の中に浮かび上がる白い服を見つける。
息を切らしたその様子から、非常事態なのだと分かったが、しかし彼「ごとき」が自分を起こしたという事実にムカついた。別に身分差があるわけではないが。
「なによ、カイト」
まさか、この集落が人間に知...【小説】サーチライト 1
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歌声が響く。高く澄み渡る声は自由な小鳥のようで、しかしその声の主は狭く暗い部屋の中にいた。
扉には重い錠。窓には鉄格子。歌いつづけるのは、まだ十にも満たないような幼い少女。時折窓の外から差し込む月明かりに、翠の髪が淡く反射する。幼いが、「可愛らしい」という形容が似合わないほどの美貌であった。
...【小説】サーチライト 序
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さぁ、いきましょう