「な…んですって…!?」


ルカは驚愕を顔に浮かべている。
ミクが自分の正体を告げてから、待つこと17秒。
やっと出た言葉がそれだった。


「そうよ…まぁ元のあなたにも、言ってはいないけど」
「どうしてあなたがここに…なぜ、神を否定した…?」
「…言わなきゃダメ?」
「いや当たり前でしょ!」


ツッコミを入れるようにルカは呟いた。
はたから見たら漫才にしか見えない。


「私は新たな体に転生した時、記憶をうっかり失くしちゃってね」
「うっかり、で済む問題でしょうか…?」


うっかりどころの騒ぎではない。


「で、今の時代での私の名前が初音ミク」
「本名はムーンリット・アートですよね」
「うん。そんであんたに会ったあと世界を再構成し、下界へ戻って数日たってやっと記憶が戻ったの」
「無理やりなまとめ方ですね」
「長い説明をすんのはめんどくさいもの」


簡潔にまとめすぎである。


「で?私がここにいる意味と、神を否定した理由だっけ?」

「そうです。私はできれば早めにこの危機から逃れたいです」



今のルカの状況……危ないキューが首に向けられていること。
(出典…ミクペディア)



「何ウィ●ペディアもじってるんですか!」

「遊びたいじゃん?」



完全な漫才状態である。


「で、えーと…私はこの世界を造った。その責任として、この世界の終焉を見届けなければいけないの」

「辛くはないのですか?」

「私はこの世界の製作者…壊そうと思えば壊せるし、人類を抹殺することだってできる。『神の歯車』なんて計画はすぐ壊すことだってできる。
 辛くなることもあるわ。どうしてこんな世界造ったんだろうって」

「だからなんだというのですか?だったら、さっさとそうすればいいではないですか」

「そうね…でも、この世界を何度再構成しても変わらない理由。あなたは考えたことある?」

「世界が…変わらない理由?」

「えぇ。誰一人気づかなかった正解を、世界の管理者である私が教えてあげる。
 正解は…何度世界が再構成されても、その度に神が気づかないうちに''再構成される前''に戻すからよ」
「私はもうそんなことを繰り返すのを見てみぬふりをするには飽きた…だから、私はあまり管理者の力を使わずに、世界を変えたいの」



ルカは、ミクの言っていることが理解できなかった。



「まぁ、話してあげれるのはここまで。あなたを戻させてもらうわよ」
「…!?」
「安心しなさい。傷はつけないわ」



ミクはキューに力をこめ、呟く。



「あなたの中の封印された記憶を開放し、あなたから私と神威への戦意を喪失させてあげるだけよ。
 ちょっと意識が飛ぶかもしれないけど、我慢してね。

 封じられた記憶を解き放ち、世界の秩序を壊さんと祈れ…
 ―――『White boxes sandplay(白い箱庭の箱)』」



キューが白く光を放ち、ルカは倒れこんだ。






「…これも、か」


ポツリと呟いたミク。
その手に握られていたのは


鍵穴が一つついた真っ白なルービックキューブ
それに、金色の鍵



それだけだった。












*















「…は?」



レンという少年が呟いた。
僕何か悪いこと言っただろうか。



「ていうかさ…神威って人、君なんでここにいるの?」
「すいません、それはこっちのセリフです」



僕が知る限り、ここは影の世界への通路…の、ど真ん中なはずだ。
なんで他の人間がここに?



「…なんか、掘ってたら変なカプセルが出てきて…なんか開けたらそれに飲み込まれて…気づいたらここにいた、ってだけですが?」
「そうかい…そのカプセルが原因だな」
「で、あんたがここにいるわけは?」






*=*=*=*






「…とりあえず落ち着いて聞くが、君はカイトの敵だよね?」
「あぁ。計画を阻止するためにここに来たけど君に刺されて今こうして影の世界への通路を聞いている、けど?」
「…話ハショリすぎじゃない?」


VY1が呟く。
突如訪れる、長い沈黙。


「…」
「…」


なんだろう、この空気は。
なんだろう。何か話してくれ。

やがて長い沈黙を破ったのは、VY1の笑い声だった。


「…ッククッ、っははははッ!!」
「…何がおかしい?」


VY1は何かがツボにはまったように笑い続けていた。
このまま見てたらこいつ、笑いすぎて死ぬんじゃないかと思ったほどだ。
やがてVY1は落ち着き、僕に言った。


「やはり、君はおもしろい。君のような人間は始めてだ…さすがは『影神』、というわけか」
「何が言いたい」


VY1は落ち着いてこそいるが、顔は少し笑い泣きをしていた。


「気が変わったよ。協力してあげる」
「…君はカイトの側近ではないのか」


いきなり何を言い出すかと思えば。



「私は元から、カイトの計画に参加する気などさらさら無いのよ…あなたのような、世界を変えてくれる人を待ってたの」

「君は一体…」

「カイトは私しか仲間がいないの。私が寝返るはずがないって、信じ込んでるのよ…裏切るには絶好のチャンスね」

「カイトってなんか痛い人だね。仲間がいないとか」

「えぇ。そして、私は影の世界の者…本当の姿なんてないから、なんにでも変身できる。カイトはそれを知らないわ」

「ようするに、君は僕らの仲間になってくれるのかい?」

「もともとムーンリット様と影神には興味があったし、協力したいと思ってたの。ハクさんは私にあなたに協力しろとも言ってたし」

「……(ハクさんて誰だろう)」

「とにかく、私はあなたに手を貸す。あのバカイトを倒して」




よくはわからないが、この人は味方になってくれるらしい。




「ところで、『VY1』って呼びにくいんだけど?」
「…じゃぁ『ミズキ』って呼んで。これ本名」
「へー…」

「ていうか、君の声聞き覚えあるけど…」
「あぁ、世界の狭間で君とムーンリット様に助言したわ」
「…あの時の声は君だったのか…」
「まだバカイトの近くにいなかったもの」




とりあえず…




ミズキが、仲間になってくれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

僕と彼女の不思議な校内探検 22【リレー】

閲覧数:568

投稿日:2011/12/13 19:44:30

文字数:2,593文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    KAITOが痛い人になってきてるw
    続き楽しみにしています(*´∇`*)

    2011/12/14 17:03:09

    • ゆるりー

      ゆるりー

      なんでこんなKAITOになってるのかはわかりませんw
      続き…はリレーですので、相方さんが書きます。

      2011/12/14 17:16:49

オススメ作品

クリップボードにコピーしました