「神威」

 僕の背中から声をかけたのは初音だった。
 初音は僕の友人……というカテゴリでいいのかな。正直言ってよく解らない。かつてはなんでも知っている人間で、そして今はただの僕のクラスメイト。

「どうしたんだい、そんな寝ぼけた声で」
「別に寝ぼけたつもりはないし、まるであんたが話したくないような口ぶりなのだけどどういうことか説明してもらっていいかな?」
「いや、つまり、まあ、そういうことだよ」
「つまり話したくないわけ?」

 首肯。
 直ぐに初音のチョップが僕の頭にクリーンヒットする。痛い。
 初音は小さく溜息を吐いて。

「……まったく、そんなことよりあんたメダル知らない? 最近『神様グラス』ってゲームが流行っているんだけどさ」
「神様グラス? あー……なんだっけ」

 僕は脳をフル回転させる。
 神様グラス。確か主人公が山の中でヤタガラスと出会って、神様を見ることができるメガネを手に入れるんだっけかな。社会現象になっているらしくて、そのメダルが品薄になっているとかどうとか……。

「ささらがイザナミのメダルを持っていてね……それがほしいと言ったら『それじゃツクヨミと交換しましょうか?』って言ったのよ! 何言ってるのよ! ツクヨミってSレアよ!? ふざけんなって話よね!!」
「お、おう……。というかあれって対象年齢まんま子供だよな?」
「何言ってるのよ、アニメ見てごらんなさい。私たちでも理解出来るネタ満載よ。先週はアマテラスが『天岩戸だよ!全員集合』とか言ってて抱腹絶倒したわね……」
「なに言ってんだよアマテラス?! チョーお茶目だなオイ!」

 日本神話でよく知られるようなアマテラスとはまったく違うぞ!
 ……というか、メダルねえ……。

「メダルなんて持ってないぞ。僕はそんな低俗なものやらないからな」
「モンコレマスターはやってるのに?」
「別にモンコレマスターはよくない?! 世界で愛されているし!!」
「あーら、あなたさっき低俗なものはやらないって言ったじゃない。なんだっけ? 種族値? 厳選? なんか卵を孵化させてはチェックしているわよね」

「別にいいじゃんか! 君たちみたいにお金がかかるゲームじゃなし!」
「……まあ、いいや。あんたがそれを持っていないなら用無し。適当に探すわよ。オークションでもなんでもいいからツクヨミが欲しいのよ私は……!」
「あ、これなら持ってるけど」

 そういえばさっきお菓子についてきたんだっけか。ウルトラレアらしいが僕はゲームをやっていないし。だったらやっている人にあげたほうがいい。
 それを受け取った初音は笑みを浮かべる。

「こ、これって……ムーンリット・アートじゃない! ウルトラレア! いいの?」
「だって僕はゲームをやっていないし。持っていたら手持ち無沙汰だろ?」
「ありがとう♪」

 ウキウキになったようで、初音はスキップしながら外へと出て行った。やれやれ、やっと静かになった。
 そして僕は小さく溜息を吐きながら、再び作業に取り掛かるのであった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

僕と彼女の不思議なゲーム

ネタができたので。

余談ですが、「僕彼」シリーズのセルフリメイクを始めました。「僕と彼女のセカイ」で検索して頂けますと読めます。

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投稿日:2014/07/27 00:42:04

文字数:1,272文字

カテゴリ:小説

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