(本作は『僕と彼女の不思議な校内探検』第五話の行間部分からの続きとなっております。)

 ハロウィン、とは――。
 ヨーロッパを起源とする民俗行事で、毎年10月31日の晩に行われる。西ヨーロッパ古代のペイガニズムにもとづく死者の祭りおよび収穫祭、とりわけケルト人の行うサウィン祭に由来するとされている。由来と歴史的経緯からアングロ・サクソン系諸国で盛大に行われ、今日イメージするハロウィンの習俗は19世紀後半以降、アメリカの大衆文化として広まったものである。
 ハロウィンという語そのものから連想すると、カトリックあるいはキリスト教の行事と誤認されがちであるが、本来無関係である。その語源は日付上の関連によるものにすぎない。ケルト人は、自然崇拝からケルト系キリスト教を経てカトリックへと改宗していった。カトリックでは11月1日を諸聖人の日(万聖節)としているが、この行事はその前晩にあたることから、後に諸聖人の日の旧称"All Hallows"のeve(前夜)、Hallowseveが訛って、Halloweenと呼ばれるようになった。そもそも魑魅魍魎が跋扈するハロウィンの世界は、福音を説くキリストの教えと相容れるものではない。

「……で」

 初音から急に呼び出されそんなことを説明された僕はいまいち訳が解らないままである。
 あっ、ちなみに僕の名前は神威っていうよ。なんだか影神とかいうものになっちゃったんだよね。めんどくさいよね。

「聴いてるかな?」
「あー、聴いてる」
「絶対聞いてなかったでしょ」
「聞いてたよ」
「じゃあトリックオアトリート」
「早速かよ?! ……まあここに飴が」

 カバンの中に黒糖飴が入っていてよかったよ。コンビニで買っておいたんだよね。

「えっ……」
「はい」

 手渡した。なんだか慌ててるけど……どうしたのかな?

「りんごがたべたーい……むにゃむにゃ」

 歩きながら寝ている器用なルカはそんなことを言っているけど、なぜにリンゴ?

「おおっと!! こんなところに盥が!? 中には水が満たされていて林檎も入っているぞー!! これはダック・アップルをやれっていう神の思し召しだな!?」

 神はお前だろ、というツッコミはさておき。
 ダック・アップル、とは――。
 別名、リンゴ食い競争とも呼ばれ、ハロウィン・パーティーで行われる余興のひとつだ。
 水を入れた大きめのたらいにリンゴを浮かべ、手を使わずに口でくわえてとるゲームである。
 アガサ・クリスティ著『ハロウィーン・パーティー』の中ではこのリンゴ食い競争の他、昔から代々伝わってきたゲームとして、小麦粉の山から6ペンス硬貨を落とさないよう小麦粉を順番に削り取る「小麦粉切り」や、ブランディが燃えている皿から干しブドウを取り出す「スナップ・ドラゴン」(ブドウつまみ)などが紹介されている。

「という訳で、やるわよー!!」
「仕込み臭がプンプンするんだけど?!」

 仕込み臭がプンプンするんだけど!! 大事なことなので二回言ったけど特に意味はなかったぜ!! 顔文字でしめしたら『ヽ(`Д´)ノプンプン』くらいにはイライラしてるぜ!!

「なんかいつにも増して神威めんどくさいね」
「いや、いつも君がめんどくさいんだからね?!」

 今日はいつも以上にツッコミに徹したる、徹したる!! 大事なことだから(ry!!
 ……まあ、逃げるという選択は僕にはないんだろうなあ……、仕方ないからやるしかないかあ……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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  • 作者の氏名を表示して下さい

僕と彼女の不思議なハロウィン【前編】

一周年記念。

10/31追記:後編11/2公開予定

閲覧数:239

投稿日:2012/10/30 20:38:02

文字数:1,455文字

カテゴリ:小説

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