【第十四話】ENTER

 ミクさんは、何が可笑しいのか、何が楽しいのか、クスクスと、肩を揺らして嗤っている。

 私は今、この状態では何もできない。
真上からミクさんに笑いながら睨みつけられていて、動いたら一瞬で、確実に、私の命は終わる。

 私が組織に入ると言わない限り。

 『頑固ね―、そんなに大事かなあ?【ガラクタ】さんたちは。言ったでしょう?私は《斬殺者》【キラー】よ?』

 「だから――なんだって言うんですか…」

 だからなんだって言うんだ?
組織の長、キラー、――だったら何なんだよ。

 『ずいぶん威勢がいいわね――レンくんに似てきたわ。それにその眼―――』

 ミクさんが私の顔に自分の顔を近づけて、言った。

 『グミにも似てきたわね――』

 背中に悪寒が走る。
その言葉を吐いたミクさんは、まるで悪魔――いや。

 正真正銘―――《斬殺者》の顔だった。

 ミクさんは、自分の手から剣を創り出した。

 “やばいな……”

 でも、この状態では、さっきも言ったように何もできない。

 “どうしよう……”


 『せっかくだから他に奴の二つ名も教えておいてあげるわ。まずは…そうね。ルカかな?』

 もうこの際どうでもいい。
どうせ聞いても私は殺される。

 それがわかってるから、ミクさんも言っているんだろうけど。

 『ルカは、本気を出せば、世界を終わらせることができるほどの力を持ってる。だから―――《終末庭園》――【ビーナス】…』

 ビーナス…。

 確かに綺麗だった。
ルカさんはすごくきれいだったけど、ネーミングセンスは――。

 『ふふ…、じゃあ、最期に――とっておきね?グミのを教えてあげるわ――』

 グミさんにもあるのか。
そりゃ、組織出身だとあるかもしれないけど。

 「とっておき―――?」

 『そう、とっておき。あの子は、説明では被害者ぶった説明してるんだろうけど――。本当はそんなんじゃないわ。あの子は最初から、組織で邪魔者になる運命だった。だから自主的に出て行ってくれてこっちとしては、好都合だったわけね?』

 ―――は…?

 「どういう意味――…」

 グミさんが邪魔もの。

 「どういう意味なのか!!説明してください!!!」

 私は思い切り立ち上がった。
そして剣を握りしめる力を一層強めた。

 剣の表面がぽう…と明るく光る。


 『あら…?怒らせちゃった?っま、いっか。でね、あの子の二つ名は―――《禍害師》―――【エンプティ】』

 ――エンプティ。

 日本語で――空っぽ。


 グミさんが―――空っぽ―――?


 「るぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 私は思い切りミクさんに飛びかかった。

 が、それは難なくかわされる。

 その勢いで私は、吹っ飛んでまた体を打ち付ける。

 『んもう、ほんと、威勢がいいわねえ。―――【斬陽】―――』

 体中が、焼ける。
焼けるように熱い。

 熱い熱い熱い――――!!!!

 「ぅ…がぁ!!!」

 『ふふ…どうする?このまま苦しみながら斬られて殺されるか――組織に入るか―――』

 「――ハッ…ハッ…ハッ…」

 荒い息しか出ない。
熱い、でももう叫ぶ気力もない。

 「―――ぁ――い…」

 渾身の力を込めて。

 『え?ごめん、聞こえないや』

 どうなろうと、私がどうなろうと―――どうでもいい―――。

 

 「…はぃ…らぁ―――ない…!!!」



 ―――入らない。
絶対に。

 みんな仲間だから。
裏切りたくない。
みんなと一緒に居たい。

 
 ミクさんは無表情で『そう』と言って、剣を振りかざした。


 『ほしかったけど――バイバイっ』

 
 と言って、嗤った。

 

 剣が私の眉間に近づく。

 凄い勢いで。




 そして私の頭を、ミクさんの剣が、音を立てながら―――



 ―――パァンッ!





 ――――貫かなかった。




 私が瞑っていた眼を開けると、ミクさんが頭を抱えて座り込んでいた。





 『―――くそっ――、生意気な―――ッ』




 そう言い残して、ミクさんは消えた。


 私の意識もだんだん、重くなる。

 

 “――ん…―――ぃ―――…”



 誰かが呼んでいる。
訊いたことのある、声。




 眼を開けると、そこには金髪の、スーツによく似た服を着た、少年が私を心配そうに見つめていた。


 「リン、大丈夫か――?」






 「―――レン…」





ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

ミクさんの作戦は、失敗。

それを助けたのは、運命の人のカイトではなく―――

閲覧数:134

投稿日:2012/08/14 09:46:41

文字数:1,911文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    くはぁ
    ミク様、惜しい!
    私は、ミク様の味方←

    こんなミクが欲しい!
    そして、私がミクの上に立つ!!←(危

    2012/09/26 17:51:55

    • イズミ草

      イズミ草

      うお、しるるさんは、組織の者でしたか!!!

      このあたりからミク、ノリノリで書いた記憶がありますww
      ミクが自分の上に行かれたら、きっと無表情で≪斬殺≫されそうww
      気をつけてww

      2012/09/26 17:56:48

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    スライディングセェェェフレンきゅん!!
    実は君が一番リンちゃんなうなんじ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさ(ry

    斬殺者《キラー》に終末庭園《ビーナス》に禍害師《エンプティ》ですか。
    ネーミングセンスが秀逸なのか微妙なのか。
    まぁ私も負けるつもりは如何程m(うるさい

    2012/08/14 14:35:23

    • イズミ草

      イズミ草

      いつも一緒に居ますし、もしかしたらそうかも…?
      そんなに謝らなくてもwwww

      斬殺者以外はテキト―に考えましたww
      辞書ぱらぱらめくって、ぁいいんじゃない?っていうのがあったらそれで、みたいなww

      ネーミングセンスばかりは、Turndogさんには勝てませぬなぁww

      2012/08/14 17:40:10

  • つかさ君

    つかさ君

    ご意見・ご感想

    り、リン死んじゃうかと思ったぁぁぁぁ(。・ω・。)泣

    レンナイスタイミングで、ぐっじょぶですね/

    密かに、ミクふぁんとか言っちゃう←

    2012/08/14 10:49:33

    • イズミ草

      イズミ草

      死んじゃったら終わっちゃうよおお!
      レンはいつもいつもおいしいところをとって行きなさる…www

      ぁ―ドMだねww

      2012/08/14 17:37:55

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