【第二十三話】TRUTH

 平和な、「日常」が戻ってきた。

 あの後、「政府秘密組織VSディフェクト遂に闘争終結!!」と数々の新聞のデカデカと1面を飾った。
TVでも、一週間くらいはそのことの特集ばかり。
政府が闘争終結の要因は明らかにしていないというのに。

 専門家があれこれ、推測を述べているだけだった。

 そう。
つまり皆は知らない。
日本の数多くの国民は、しらない、存在がある。

 犠牲になった2つの命。

 この闘争を終わらせるために自ら命を擲った青年がいたこと。

 この闘争を終わらせようとして、剣に射貫かれて悶え苦しんで絶命した女性がいたこと。




 ――――――全て、終わった―――――――






 「今までありがとう、短い間だったけど」

 私はグミさんと、メイコさんと、レンに、頭を下げた。

 闘争が終結したということは、私ももうここにいなくてもいいわけだ。



 そして、蝉の鳴く外へ、ドアノブをひねった瞬間。

 「…待て。リン……」

 呼び止められた。

 それは―――グミさん。


 「え、と…?何でしょうか、グミさん…?」

 「簪…、持ってるよな…?」

 「え?はい、持ってますよ。もちろん」

 私はポケットから簪を取り出した。
荷物の中に入れていたら飾りが壊れてしまいそうだから。

 

 「その持ち主はカイトじゃなくて―――」

 「っ…おい、グミ!!!??それは―――もういいって!!!」



 グミさんの言葉をレンが遮った。

 ―――どういう意味だ…?
「カイトじゃなくて」…?

 「な、何を言ってるんですか、グミさん…これはカイトさんのもので…。ねえ…?メイコさん」

 メイコさんを見ると、目を逸らす、彼女。
まさか―――――。



 「それはね―――レン君のモノよ――――」




 メイコさんが言った。


 レン、の――――?


 「っおい!!メイコ姉!!!」



 「ど、ういう…こと……、レン……?」


 レンをみると、バツが悪そうに、やっぱり目を逸らす。


 「レンが、カイトに預けたんだ。壊してしまいそうだから、ってな。いうタイミングを、いつも逃してしまって―――ごめん―――」



 「ほんとなの…?」



 まっすぐ、レンを見つめた。


 「―――――そうだよ――――」



 まっすぐ、レンも私を見る。





 そんな…。
じゃあ、私の運命の人は――――レン…?

 

 そういえば、初めてディフェクトに入ったきっかけもレンだったな。
連れ去られなかったら、私はディフェクトに入ってなかった。

 そして、カイトさんは後からだった。
後から出会ったんだった。

 ミクさんが襲ってきた時もそうだ。
助けてくれたのは…、レンだ。

 最初、優しい言葉をかけてくれたのも、レン。




 どうして私気付かなかったんだろう…?





 どう考えても、レンなのに。




 レンしかいないのに……。







 「レンが…」





 私は、レンの胸に飛びついた。

 流石に、これはレンもおろおろしている。



 「ごめん…、気付かなくて……レン…………」



 すると、レンも私をぎゅっと抱きしめた。





 「あの、お守りに入ってる紙に書いてる言葉はな――――「緋色花簪」――――」


 「緋色…花簪……」



 そっと私をレンが放した。


 私は目を疑った。


 レンをみると、優しげな物腰の着物姿の少年になっている。
優しそうな笑みを浮かべて、私を愛おしそうに見ている。

 

 「レ…」



 また変わった。
次はカッターシャツに黒いズボン、制服だろうか…?
少し寂しそうな表情をした男の子が私をさっきとは違った愛おしそうな目で見る。



 「な…に…?」




 そしてまた変わった。
袴姿の少年。
明るく元気そうな少年だったが、目は愛おしさよりも、罪悪感のようなものが浮かんでいる。



 そして聞こえる。




 “りん”



 “リン”



 “リン”





 私の名前を呼ぶ。




 思えば長い道のりだった気がする。

 思いがあふれだす。

 何とも言えない思いが、溢れて止まらない。



 “やっと逢えたね―――”




 今度は私の頭の中から。



 “連”



 “レン”



 “レン”




 愛おしそうな声。





 ずっと探していたような気がする。
さっきまで、カイトさんが好きだったのに…?

 どうしてこんなにも、目の前に居るこの人が――――愛おしくてたまらないんだろう――?




 涙が止まらない。
頬を伝って落ちていく。

 ころころと、落ちていく。




 どうしてこんなにも逢いたかったと思うんだろうか…?



 そんなことはどうでもいい気がする。
ただ、今は。






 今は。







 「リン、俺と、ずっと一緒にいてくれ――――」








 「喜んで…!」





















 笑って、返した。















ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

そういうことだったんです!

閲覧数:191

投稿日:2013/01/03 13:44:30

文字数:2,163文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    わぁぁ
    まさか「緋色花簪」だけじゃなく、四部構成だったとは!?

    過去の作品とひっかけるとか……ずるい!私もやりたい←

    2012/12/06 04:00:28

    • イズミ草

      イズミ草

      そうなんです!ww
      実はこの話の……数話前に、全部につなげられるのに気がつきましてw
      ええ、ここでもノープラン炸裂ですww

      最初は「緋色花簪」だけにかけるつもりだったんですよww

      しるるさんがやったら、私の技量不足が……orz

      2012/12/06 15:50:31

  • つーにゃん

    そういうことだったんですか!!
    感動してたら、親フラなった(笑)

    2012/09/02 17:42:55

    • イズミ草

      イズミ草

      そういうことですww

      全部読んでもらってるほうが
      「ええ!!?」感はあると思いますww

      2012/09/02 18:45:23

  • つかさ君

    つかさ君

    ご意見・ご感想

    そ、そういうことだったんですか....!
    やっと結ばれてくれた...
    先輩の書く小説はやっぱ面白いです!
    そして感動...(。・ω・。)泣

    お次も期待しています-

    2012/08/31 10:02:58

    • イズミ草

      イズミ草

      ありがとうございます><
      いやいや、ありがとうねww
      感動してくれるなんてさ…。

      2012/08/31 10:04:31

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