コツン

「あら?」
『あ・け・て』

カチャ

「あなたは・・・」
「あれ?僕を知ってる?」
「ええ、もちろん」
「にゃははっ こんな綺麗なお嬢さんに覚えてもらってるなんて。光栄だなぁ」
「いつもそこの商店街のお魚屋さんからお魚をくすねているでしょう? 
 親父さんの怒鳴り声とあなたの鳴き声、ここまで聞こえてるわよ」
「あそこのサバは絶品だよ。お嬢さんも今度食べる?」
「一緒に泥棒しに行こうっていうの?」
「人聞きが悪いなぁ・・・ まあ当たりだけど」
「いやよそんなの。はしたないわ。あなたと一緒にしないでちょうだい」
「・・お嬢さん、けっこう気が強いんだね。そんなとこも素敵だな」
「まあ、お上手だこと。 残念だけど、そんな口説き文句にひっかかるようなバカじゃないわよ」
「君をひっかけに来たんじゃないよ」
「じゃあ他に何だっていうの? こんな時間に」
「君と話がしたくて」
「ふうん・・・?」
「――だめ?」
「・・・いえ」
「へへ、よかった」
「・・・」
「君さ、いつもこの窓から外を見てるだろ」
「えっ?どうして・・・」
「僕もさ、あそこん家の屋根で昼寝してるとき、君を見てるんだよ」
「気づかなかったわ」
「そりゃそうさ。君はもっと遠くを見てるからね。 ・・・寂しそうな顔で」
「・・・・・寂しそうな顔?私が?」
「うん。 ・・あれぇ?顔赤いよ?」
「なっ・・・!ばっ、ばかっ!覗き込まないでよっ!」
「にゃははは、ごめんごめん」
「・・・もう」
「――君さ、本当は、外に出たいんだろ?」
「えっ・・・」
「こんな窮屈な部屋に閉じ込められて、退屈なんだろ?」
「そんなこと・・・」
「嘘つかないで」
「っ・・・」
「外の世界は素晴らしいよ。そこら辺を駆けまわって、仲間と遊んで、日向ぼっこして。
 狭い部屋の中じゃできないこと、たくさんあるよ」
「・・・・・」
「部屋の中で一生終わるよりさ、
 外に出て、大地を踏みしめて、太陽の光を浴びて、自由になってみようよ」
「・・・そうね。外の世界は、きっと素敵なんでしょう。 ・・・でも」
「でも?」
「でも・・・ 私はもうこの生活に慣れ親しんでしまっているのよ」
「・・・こんな狭い部屋の?」
「そう。 毎日おいしいご飯が食べれて、お風呂に入れて、ふかふかのベッドで寝れて。
 そうやって今まで生きてきたものを、そんな簡単には変えられないわ」
「・・・だけどさ、」
「確かに、外の世界は魅力的だわ。さぞかし楽しいんでしょうね。
 でもね、その分、危険だってたくさんあるでしょう?」
「そりゃあ、まあ・・・」
「あなただって、明日にでも車に轢かれて死んじゃうかもしれないのよ?
 そんなとき、あなたを守ってくれる人はいる?」
「…そうだね。 でも、もしも君が外の世界に出たら、僕が君を守ってあげるよ。命を懸けても」
「え…」
「だから、ほら。一緒に窓を飛び出そう」
「・・・・・・」
「さあ!」
「・・・・とっても嬉しいけど・・・ごめんなさい、やっぱりできないわ」
「そんな・・・」
「私にはもう、守ってもらえる人がいるもの」
「・・カイヌシ、ってやつ?」
「そうとも言うわね。 ・・・あの子を一人ぼっちにするなんてできないわ」
「・・・そっか」
「ありがとね、野良猫さん。
 ・・・そういえば、名前を聞いてなかったわね」
「僕はレン。 君は?」
「私はグミよ」
「グミ・・・ 可愛い名前だね。君にぴったり」
「あら、正直だこと。 あなたも素敵な名前よ」
「お褒めに預かり光栄です、グミお嬢様」
「ふふ、グミで良いのよ。  ・・・ねえ、レン?」
「ん?」
「明日も・・ここに来てお話してちょうだい?」
「――もちろん」

ちゅ

「きゃっ・・・!?」
「約束のしるしだよ」
「・・・・・・」
「顔真っ赤」
「ぅ・・うるさいっ!ばかばか!」
「にゃははははっ。 じゃ、おやすみー」
「もう・・・・ おやすみなさい」

・・・待ってるから。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月が見える窓辺で

嗚呼、素晴らしき本家動画様→【http://www.nicovideo.jp/watch/sm14990051


・・オーロラのお話はログアウトしましt(ry

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投稿日:2012/01/13 00:09:59

文字数:1,648文字

カテゴリ:小説

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