……カツッ。


「ん? なんかぶつかったな?」

「タイムカプセルね! きっと!」

「それはないだろうきっと……」

僕は落胆しながらスコップを置いて、眺めた。

それはなにかのカプセルのような……そんな感じでもあった。正直あまりよくわからない。

「じゃっ。開けるわよー」

リンが手をかけたそのとき。



『妬み狂ったヒトならざる物の物語』


機械的な、物静かな女性のような声が僕の耳に響いた。


「…っ!!!!!」

僕は思わず声を上げてしまった。

「どうしたの? レン」

なんでもないよ。ちょっと立ち眩があったみたいで。

「ふうん。まあ暑いもんね。ちょっと休んでていいよ」

「うん……、ありがと」

そう言われて僕は近くの地面に腰掛ける。


『そのハジマリへようこそ』


「っ!!」

また、声が聞こえた。

いったいなんなんだ! 気づいたら僕は声を殺していた。



『本来は必要とされないもの

 即ち、全てを失っていくだけなのだ』

声は、続いた。

リンはそれに気づかずに、カプセルを地面の上に持っていく。


『やがて、自我も、人も、一番大事な自尊心すらも――

 嘲笑の対象でしかないのだ』


何が言いたいんだ。


『誰にも認められず、自らを崩壊させていく――』


お前はそのカプセルから声をだしているのか?


『利己も、自己も、崩壊していく。

 そう。――昔の私のように』


お前はなにものだ?


『――私は』





神。






世界が暗転した。

てっきり僕がおかしくなったかと思えば。

「な、なによ……!! これ!!」

どうやらリンも同じ風に感じていたようで。

リンが持っていたのは恐らくあのタイムカプセルのものであろう蓋だった。

天蓋を外して、そこにあったのは――




無。





何もなかった。それを何と捉えるかは人の自由かもしれないけど、ただ僕から見て思えることはそれだけだ。

「いったいなにをしたんだ?!」

「わからない!! ただ、これを開けただけ……!!」









そして、全てがそれに飲み込まれた。








つづく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

僕と彼女の不思議な一日【番外編中編】

この作品シリーズでは、お久しぶりですね。

今回は先々月の末に公開してた番外編の中編をお届けします。

Next;本編21話投稿後に。
Back;http://piapro.jp/t/TZKl

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投稿日:2011/12/07 19:05:16

文字数:922文字

カテゴリ:小説

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