電車が揺れる。
電車の窓が吐き出すのは、朝の喧騒。
スーツ姿の人々が、疲れた顔で電車に乗り込む。
こいつらは、自分が替えの聞く人間部品だってことがわかってないのだろうか?
顔に笑みをうかべ、私、亜北ネルはつぶやいた。
~巡り廻るナイフの物語~ 第1章「不良少女」 第1話
駅のホームに降り立った私は、タバコに火をつけた。周りの大人たちが、虚ろな目で私を見る。
無理もないだろう。なんたって私は高校生なんだから。
タバコをふかしたまま家に帰る。家に帰ってもすることはない。
別に親に会いたくない。
私の親は偽者。本物はいない。
私の親は私が3歳のときに死んだ。2人で出かけた先で、偶然トラックに引かれた。即死だったらしい。
身寄りがなかった私は、ほとんど血のつながりのないような親戚の家に引き取られた。
私がこうやって世間一般から白い目で見られる「不良」になったのは、中学生のときだった。
親戚の家に引き取られてから、私は誰とも意志の疎通をとろうとしなかった。
だから当然、小学、中学と友達などできるはずもなかった。
そんなある日、クラスでお姫様ぶってるブスに目をつけられた。
授業で難しい問題を私が答えたのが行けなかったらしい。
しかし、こともあろうに私はそいつをぶっ飛ばしてしまった。それを機に私の周りにははいつのまにか不良達が集まってきていた。
万引き、ケンカ、カツアゲ、喫煙、飲酒など、そういうことはすべてやった。
また、高校から援助交際まで始め、ほとんど家に帰らなくなった。
高校には入ったものの、初日に「もう来ないから」って言ったっきり、行ってない。
家のドアを開ける。とたんにババアの怒声が飛ぶ。
「ネル、あんた今までどこをほっつき歩いてたのよ!!ちょっとこっち来なさい」
私は軽く無視ると、自分の部屋に入り、鍵を掛ける。
「あ、ちょっと、ネル!開けなさい~・・・・ちょっとあなた、来て!!」
ババアが階下に下りていく音がした。
私はケータイを確認する。
「げっ、今日金曜日じゃん・・・・あいつに会うの、やだ・・・・」
今日はあいつに会う日。もちろん援交だ。
しかし背に腹は変えられない。私は着替え、階下に降りた。
これから、どんなことが起こるかも知らずに・・・
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