虫除けの煙、焚かれて揺れて、外気に溶けてゆく。
揺蕩う煙、透かして、輪郭だけを見ている。

教えて。
話して。

俯き小さくまばたく。
(見ている世界がどんなものか理解したい。)
小刻みに息をする。
(揺蕩う煙の向こう、息してる。)

探して。
(掴み切れない。闇の中に手を伸ばすよう。)
見つけて。
(温度の低い顔で何かを考えてるよう。)

ただほどけた紐を結ぶ。
弱く強く口を噤む。
乱れ、秩序、ずれて揺れて、
凡てが広がり溶けてゆく。

「......ねえ、消えたくない?
この星系、浮かぶ、銀河の片隅で、つまらない夢を見ていたんです。
海で!
風を見て、波を見て、混ざりゆく泡に、いつか、均質に慣らされる運命を予見た。」

(──風を見て、
──混ざりゆく泡にいつか、
──均質に慣らす運命を予見た・・・。)

かき混ぜられた空調のきいてない空気。
──かき混ぜられた空調のきいてない空気。
揺蕩う煙、透かして、輪郭だけを見ている。
──揺蕩う煙、透かして、輪郭だけを見てる。

──見ている世界がどんなものか理解したい。
だから見ている世界がどんなものか理解して。
ねえ耳を澄まして。

──いつしか同じ妄執を見ていた。


ねえ。渦巻いて、解けてッてゆく銀河の星みたいに、溶け揺れて仕舞いたい。
着物の帯で
結ばせて、〆させて。暑い風が吹く居間から
連れ出して、誰でもいいの。墜ちれれば。

(結べばいい。暑い風が吹く居間から
連れ出すわ。このまま墜ちれれば。)

暑い風が吹いた。
宇宙の生まれたときみたい。湿った川沿いで。
乱れる秩序ずれる揺れる。
冷たい水にとけ、乱雑、
乱雑にとけてゆく。
醒めないうちに。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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熱的死

閲覧数:316

投稿日:2024/08/01 08:31:52

文字数:715文字

カテゴリ:歌詞

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