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  それは二人の5歳の誕生日の時に起こりました。その日の王さまはとても機嫌がよく、そのお祝いは例によってとても豪華なものになりました。特にリンのドレスは、国の中でも一流の職人を何人も呼び寄せて、一番の素材を幾らでもあつめてきて作らせましたから、そんなすばらしい衣装を身に纏ったリンはどれだけ美しく見えたことでしょう。レンはそんなリンをとても自慢に思ってすっかり満足していたので、自分の衣装が、もちろんつくろいたての立派な衣装ではあるけれど、姉のそれよりも見劣りするだなんてことは考えもしませんでした。

  レンにとっては王さまに会うのは久しぶりのことでしたから、お話したい事や聞いてみたいことがたくさんありました。だからうっかりこんなことを口走ってもちっとも自分が王さまの気分を害しただなんて気付かなかったのです。

 「ねぇ、おとうさま、このお城の外で暮らしている人たちのことを知ってる?ぼくの家庭教師が話してくれたんだ。こんな美味しいもの一口も食べた事が無くて毎日同じ服ばかり着ているんだ、ご馳走もお洋服もここにならいくらでもあるんだから外の人たちにわけてあげだらいいんじゃないかな。」

  王さまはその言葉を聞くとしばらくあきれて口を閉じる事もできませんでしたが、次第にその顔が真っ赤になって、しまいには立ち上がってこう叫びました。

 「この愚かな息子、いや、息子とも思えない小僧をそのとんちんかんな頭がまともになるまで牢屋にぶちこんでしまえ!」

  リンは牢屋がどういうところなのかなんとなくしか分かりませんでしたがレンと今までのように会えなくなってしまうのだということだけはわかっていました。そしてそれをとても嫌だと思いましたが、王さまの怒り方があんまりにも恐ろしかったので何も言えずに泣いていました。

  それ以外の、王さまの周りに居る人も最早だれもレンの事をかばおうとはしませんでした。とくにお城で贅沢に明け暮れていた人たちは、レンが大きくなって王さまになったりしたら今までのように贅沢な暮らしができなくなるかもしれないと思っていたのですから、むしろ喜んだ位なのです。



  そうしてレンはお城の地下にある牢屋に入れられて、王さまが死んでしまうまで出てくる事はできませんでした。国民にはレンは病気で死んでしまったのだと嘘をつきました。だからだれも、あの家庭教師が広場で家族と一緒にずたずたになって広場に吊るされている本当の理由をしりませんでした。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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悪くて可哀想な双子 (2)

!! CAUTION !!

これは悪ノP様の言わずとしれた名作「悪ノ娘」と「悪ノ召使」を見て感動した上月がかってに妄想を爆発させたそのなれの果てです。

・当然の事ながら悪ノP様とは何の関係もありません。
・勝手な解釈を多分に含みます。
・ハッピーエンドじゃありません。(リグレットとの関連も無いものとしています)
・泣けません。
・気付けば長文。(つまり、要領が悪い)

以上の事項をご理解いただけた方は読んでみて下さい。

閲覧数:972

投稿日:2008/07/03 00:17:49

文字数:1,046文字

カテゴリ:その他

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