【第二十二話】ENDING

 気が付いたら、眠っていたらしい。
体を起こす。

 目には涙が、頬には涙の伝った跡が、ある。

 グミさんの過去、レンの過去。

 知らなかった。
前に説明してくれたのが、すべてではなかった。

 「くそっくそ、ぉおっ!!」

 グミさんが座り込んで、地面を殴っている。
泣きながら。

 声が震えている。

 「なんで…、皆には知られたくなかったの…、にぃ!!!!」

 泣きながら、言う。

 「グミさ…」

 「あーあ、知られちゃったねー??どうする―?グミ―――いや、≪エンプティ≫?」

 私のグミさんを呼ぶ声を、ミクさんが遮った。

 やっぱり笑ってる…。
何がそんなに楽しいんだろう。

 「な…、んで…………?」

 横で、レンが呟いた。
よこたわったまま。

 「…あー。そっか。こっちにも、いたっけ?ゴメーン、ごめんごめん」

 謝る気がないような声で、レンに、ミクさんは謝る。

 「さあて、次は―――」

 ミクさんが私の後ろに目を向けた。

 座っているのは―――メイコさん。


 「ミク―――、何がしたいの、いったい」

 「何って、ガラクタをちゃんと処分したいだけよ。ゴミだからね」

 「そうか、そうか…」

 「なによ、その態度は……?あんたもあの二人みたいに、自分の過去を―――」

 「ミク」


 メイコさんが今までないような、ドスの利いた声を出した。
さすがのミクさんも動揺している。

 私だって驚いた。

 ただ、グミさんは周りの声なんて聞こえていないみたいで、ずっと地面を殴り続けている。
 レンはただただ茫然と、横たわっている。
どこを見ているかわからない、焦点の合わない視線で。


 「あんた、自分で墓穴掘ったの気づいてないんだ」

 「はあ?私はいつでも完璧よ?だってこの国の頂点だもの」

 「うん、そうね。ミクはこの国の頂点だわ。でもね、内閣の大臣が犯罪をすれば、裁かれるように、現トップだって裁かれるのよそれはこの国の大本が認めてることだわ。政治に関わってるのなら、それくらいは勉強しておきなさい」

 「何が言いたいの」

 「あら、だいぶ簡単に説明したつもりだったんだけど―――わからなかった??」

 メイコさんがくすりと笑う。

 ミクさんの眉間にしわが刻まれる。
だいぶ怒っているようだ。

 
 「―――はっきり言いなさい」


 「気付かない?ここ。今まで動物なんて入ってこれやしなかったのに、今は蝉が鳴いてるの」

 
 気付かなかった。
本当に蝉が鳴いている。

 うるさいくらいに。

 悲しいほどに。


 「だからはっきり―――」



 

 「ミク。あなたはもう終わりよ」





 「―――なっ!!!????」


 「??」


 意味がわからない。
今まで絶対的権力と武力で太刀打ちしても、根本的なところはどうすることもできなかったのに。
 どうしてそんなに断言できるんだろう。

 ミクさんがメイコさんに向かってつぶやく。

 
 
 「――――殺―――…ッッ!!????」



 しかし、それは最後まで言われなかった。

 
 驚いてミクさんのほうをよく見ると、ミクさんの両腕と、首と、両足と、腹部が、何やら光るものによって動きが封じられていた。


 「そこまで、だ」




 後ろから声がした。


 そこには、警官の格好をした、長髪の男性。
紫色の髪。


 「―――あっ!!あなたはっ!!!!」


 「に、い…様――??」


 ミクさんが苦しそうに言う。


 「ミク残念だったな。ほんとに墓穴掘っちゃてるよ?」

 そう言いながら、ミクさんのほうへ歩みを進める、男性。


 「人を殺したら、通報されるのわかるだろ。しかも、2人も被害者でたって?」

 「う…っ」

 「―――≪キラー≫としては、間抜けな終わり方だな」


 そうか。
今わかった。

 人を殺したから。
今までは建物だけだったから。
むりだったけど、今度は人だから。

 でも、どうして、グミさんのお兄さんが生きてるんだろう。


 「君が――、新入りだね」

 私のほうを見た。

 「はい…」

 「グミの過去は、見た?」

 「……はい…」

 「そうか。あの後、俺は瀕死の状態だったんだけど、奇跡的に助かったんだよ。開発途中の治癒魔術でね。だから動けるようになったら、グミを探しに行こうと思ってたんだ。でも、対組織グループのリーダーなら、会いには行けないと、思ったんだよ…」


 そうだったのか。
じゃあ、グミさんはだれも殺してないってことだ。

 もしかしたら、今の放心状態のグミさんを助けられるかもしれない!!


 「ちょっと、待っててください!!」


 そうとだけ言って、私はグミさんのほうへ小走りで行った。


 「グミさん?お兄さん、生きてたんですよ!!グミさんはだれも殺していません!!」

 「嘘だ…嘘だ…」

 そう言ってまた地面を殴る。

 「ほんとですよ!!いますって!!」

 「嘘だ…あたしは、兄様、殺した。人殺し、邪魔者、の、忌み子、だ」

 「もう!!」

 私はグミさんの体を無理やり立たせて、お兄さんのほうへ連れて行った。


 すると、グミさんは怖いものでも見るような目で、お兄さんを凝視した。


 「ぅわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!???????????」


 暴れだす。


 「ぐ、グミさん!!??」


 「い、やだあっ!!あたしがっころ、した!!ごめんなさいごめんなさいっ許してくだ、許して許してゆ、ゆる、許し、ああ、うああ、ひ…ああああ、やあだ…やめ」

 もう何を言ってるかわからない。
グミ何の精神は完全に壊れていた。

 「グミ―――」

 お兄さんが呟く。

 「いや、許し…てぇ…」


 私にしがみついてくる、グミさん。
きっと、今目の前にいるお兄さんは幽霊とでも思ってるんだろう。

 


 「グミ!!!!!」




 お兄さんが叫んだ。


 グミさんは目を見開いてお兄さんを黙って見つめた。


 
 「ごめん…、俺は……死んでないよ……」



 グミさんの頬に触れる、お兄さんの手。


 グミさんの目から涙かこぼれた。



 「に、いさ、ま……」



 そっと、グミさんも手を触れ返す。

 


 「兄様!!」






 お兄さんは笑っていた。


 グミさんも笑っていた。






 「さあ、ミクを連れていこう。」

 「あ、すみません…」

 私とメイコさんが謝った。

 「大丈夫だ。長い間、お疲れ様。これで、きっとこの馬鹿げた戦いは、終わるよ」



 グミさんはすっかり元通りになった。
そして、晴れやかだ。

 レンは放心状態からだいぶ回復して、しゃべれるようにはなった。
でも、まだちょっと変だ。



 でも、2人とも生きてる。

 
 もう二度と動かない、2人のことが胸に痛いけど。











 ―――終わったんだ―――――――。



















 私は簪を握りしめた。










 しゃらりと音が、蝉の声と一緒に、響きわたった。






















 



 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

CrossOVER NoIsE.

闘争集結。

あとはもうちょっとです。

閲覧数:204

投稿日:2012/08/23 10:58:32

文字数:3,067文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    がっくん、きたぁぁ!
    メイコさんの言っていることを理解できなかった私……してやられたぁww←

    きもちよ~く、明かされたww

    2012/12/06 03:57:09

    • イズミ草

      イズミ草

      おお!
      してやられてくれましたか!!

      私も「何言ってんだこいつ……どういう意味?」ってなってたんでwww

      誰かがしてやられてくれて、私としては満足ですw
      余は満足じゃww

      2012/12/06 15:48:33

  • つかさ君

    つかさ君

    ご意見・ご感想

    うわぁぁぁっ、泣きそうですよ、泣きますよ!?
    兄様死んでなかった!
    ミク捕まった!?

    いっきに良いこと起りすぎて
    頭がパンクしそ-っ...w

    2012/08/23 11:17:20

    • イズミ草

      イズミ草

      おぉお!!
      ありがとうございますぅ!!!!!
      死んでませんでした!
      つかまりました!!

      いや、そんな複雑な内容にしたはずじゃ…。

      2012/08/23 11:21:39

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