三日月の輝く夜に
ある家族が家を出ました
父に母 娘に息子
とても仲が良さそうです

娘は「母」に尋ねました
「母さん この先は
どんな幸せに続いてるの?
そこでは
大好きなおやつを沢山食べられるのかな?」
「母」は静かに笑いました

息子は「父」に尋ねました
「父さん この先に
神様は待っているのですか?
どうして
そんな悲しい顔で僕らを見るのですか?」
「父」は悲しそうな表情のまま笑みを浮かべました

暗い森の中
家族は前へと進みます
しかし子供たちは知っていました
母さんたちが秘密にしていること
そして このまま進めば
もう帰ることは出来ないということも・・・

森の奥深くまできた頃に
「父」と「母」は
子供たちを残して離れていきました
子供たちはそのことに気付いていましたが
何も言いませんでした

二人ぼっち残された子供達は
まるでヘンゼルとグレーテルのようです
家に帰ろうとしても
三日月の僅かな光では道もわかりませんでした

二人は歩く さ迷い歩く
道はわかりませんが
子供たちには手がかりが無いわけではありません
「母」がお守りとしてくれたガラスの小ビンが
月に照らされてピカピカと光り
道を照らしてくれています

しかしそれが
正しい道かは子供たちは知りません
ただただ歩きます

そして子供たちはあるものを見て
こう言いました
「「やっと見つけた 僕らにはわかる

 ここが魔女の家」」

子供たちはにやりと笑いました
「「さあ 悪い魔女をやっつけろ」」

二人は家の中へと入っていきました
女の子は「魔女」の身体を
燃える釜戸へと放り投げました
男の子は女の子を止めようとする
「魔女の子分」を殺しました

そこは今まで彼等が
「父」と「母」と一緒に暮らしていた家でした
そう 彼等のいう「魔女」とは
かつて「母さん」と呼んだ人
「魔女の子分」とは
かつて「父さん」と呼んだ人だったのです

二人が知ってしまった両親の秘密
それは彼等が二人の本当の親じゃないこと
そして 本当の「母」を偽りの「母」が
殺してしまったということ・・・
彼女がいなければ彼等はきっと
本当の「両親」と幸せに暮らせたのでしょう

女の子はもう二度と会うことの出来ない
「母」に向かって言いました
「ねぇ母さん 私を褒めて
悪い魔女を倒したのよ」

男の子は会ったことのない
「父」に向かって言いました
「ねぇ父さん 僕を褒めて
魔女の子分も倒したんだ」


「「さぁ 本当の母さんと父さんに会いに行こう」」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

置き去り月夜抄

童話風「置き去り月夜抄」です。個人的解釈です。

閲覧数:277

投稿日:2011/06/20 20:18:06

文字数:1,065文字

カテゴリ:小説

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