「レン、目つぶって!」
「うん、いいよー。」
「はい、これあげる!」

ふさふさとした芝生の上で笑いあう少年と少女。
顔がよく似ていて、どうやら双子のようだ。

「うわー、すごいね!お花のわっかだぁ!!」
「えへへー、頑張って作ったんだよ~。」

少年の名前は鏡音レン。
少女の名前は鏡音リン。
2人の笑顔を見ていると心がなごむ。
まるで天使のようだ。

「ありがとう、リン!」
「どういたしまして~。」

笑いあう姿は裏がなかった。
ただの仲良しな双子。
だがそんな関係は今日までだった。

それはある晩のこと。
家族全員で仲良く晩御飯を食べているときに、5人の男たちが現れた。

「ごめんなさい、誰か居ますか。」
「はーい。」

母親が濡れた手をエプロンで拭きながら玄関へと向かう。

「何のご用でしょう?」

5人の男は見た目、スーツを着ていてサラリーマンのようだったので、
別に不審な感じはしなかった。

「夜遅くにごめんなさい。実は私はこの国の城につかえる者なんですが・・・。」
「そんなすごい人がなぜこんなところに?」
「話すのも面倒なのでとりあえずこの書類を。明日また来ますので。」

そういうと男たちは出て行った。

「・・・!!」

渡された書類に書かれていたことは、王女の後継ぎについて。
王女は「後継ぎはきれいな子」と決めていて、その後継ぎを探していた。
王女にも一応後継ぎ候補はいるのだが、どこにも王女と似ているところはなく、
顔は不細工、性格は頑固で威張り散らすというとんでもなかった。
いくら王女の後継ぎ候補とはいえそんな人をするわけにはいかない。
だから後継ぎ候補を探していたのだ。

問題はなぜこの家か。
それはリンにあった。
リンは器用で頭もいい。とても子供とは思えない頭脳を持っているからだ。
そして男たちが最後に言った言葉。「明日また来ます」
この言葉はつまり、「明日リンを連れ去ります」という意味になる。
このことに気付いた母親はリンにこういった。

「リン、ご飯食べ終わったらかくれんぼしよっか!」
「ほんと!?うん、やるやるー!!」

正直に言ってもリンには通じない。
だからかくれんぼで男たちの目から消そうと考えたのだ。

「ごちそうさまー!」
「こら、レン。またにんじん残して~。」
「だって嫌いなんだもん、おいしくないんだもん。」
「だめよ、好き嫌いしちゃ。」
「お母さん、かくれんぼ!早く早く!!」
「片付け終わったらね。」
「俺もやるー!!」
「はいはい。」

午後7時、かくれんぼが始まった。

「お母さんが鬼やるわね。」
「「はーい!」」
「1,2,3.....」

リンとレンはクローゼットへ向かった。

「おいリン~、同じところに隠れるなよ~。」
「レンだって!」
「もうい~かい!」
「ま、まってまって!!」

2人は一緒にクローゼットへと隠れた。
母親は2人がクローゼットに隠れたことはわかったが、1つ予想外だった。
それは、リンだけのはずがレンまで一緒に隠れてしまったことだ。

(閉じ込めるのはリンだけなのに・・・!)
「も~い~よ!!」
「・・・しょうがないか。」

母親はクローゼットの鍵を持ってくると、
涙を流しながら鍵を閉めた。

「え、お母さん!?」
「なにするの!!」
「ごめんね、ちょっと明日の朝まで隠れててちょうだい・・・。」

母親はさみしそうに答えた。
リンとレンは母親の気持ちを何となく理解し、
真っ暗いクローゼットのなかで朝まで隠れることにした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

悪ノ召使 第1話

悪ノ召使を小説にしようと思ったらこんなに長く…。
しかも前編だし。
こうなったら後編を縮めるかぁ~。
・・・・やっぱり駄作でごめんなさい。m(_ _)m

閲覧数:589

投稿日:2009/01/01 18:48:11

文字数:1,470文字

カテゴリ:小説

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