父の日です。
　でもですね……。
レ「うちに『お父さん』なんていなくね？」
　そう、問題はそれ！
　うちには、『お父さん』なんて感じの人間はいないのだよ！
　せっかくプレゼント用意したのに……。
リ「母の日はMEIKO姉にあげたんだけどなぁ～……KAITO兄はお父さんっていうよりヘタレ兄さんでしょ？」
カ「リンちゃん、ひどいよぉ……」
　ドアの前で盗み聞きしていたKAITO兄が部屋に入ってくる。
　盗み聞きなんてするなよ、おい。
レ「何それ？」
　レンがKAITO兄の持った可愛い袋を指差す。
カ「めーちゃんに買ったんだけど……怒られそう……」
リ「え？　なんで？」
カ「私はお父さんなんかじゃないわよ！　何言ってんのよこのバカイトが！　って言われそうで……」
　いちいち女声使わなくていいですよ。
カ「でも、その後に『でももらっておく、ありがと』って言うのがすごい可愛くて！　あーどうしよう」
レ「やっぱりさ、父の日っていうくらいだから、一番年長の人にあげるのがいいんじゃない？」
　KAITO兄を空気のようにスルーするレン。
リ「ミク姉は16で、ルカさん20、KAITO兄とMEIKO姉は20代前半くらいかな？」
レ「Lilyは絶対10代、ユキちゃんリュウト君論外、GUMIは10代、先生は」
リ「あげたくない」
レ「いろは姐は10代、開発コードさん達は違う、海外組もダメ、VYさん達は保留、重音が31……」
　じゃあ一人しかいない。
リ「ナ……じゃない、がっくんしかいないじゃん！」
レ「中の人400超えてるっていうもんな」
リ「うん、じゃあがっくんにあげよう！」
カ「うーん、どうしよう……」


　隣のインタネ家。
　チャイムを押すと、GUMIちゃんが出てきた。
グ「おっ、リンちゃんレン君！　今日も可愛いなあ～。あっ待ってて！　一週間前、すんごい可愛いロリータ手に入れたんだ！」
レ「がっくんいねえ？」
グ「いるよ！　お兄ちゃん、鏡音ちゃんたちが来たよ～」
が「拙者を呼んだでござるか？」
　ナスを片手に、玄関にやってきたがっくん。
グ「あのねあのね、このナス、ルカさんが持ってきてくれたんだよ！　なんかもうほんとバカップルで可愛いよね～。父の日にあげるなんて、プロポーズとおんなじ意味じゃない！」
が「GUMI殿！　言わなくてもいいでござる！」
リ「えと、父の日だから、いちおープレゼントというかなんというか……」
が「おっ、リン殿レン殿、くれるんでござるか？」
　目を輝かせて言われる。
　うーん、そこまで大したものじゃないから気が引けるなあ。
　まあ人から物もらうのは嬉しいから、まあいっか。
リ「昨日、クッキー焼いたんだっ」
が「リン殿手作りでござるか？」
リ「うん」
グ「何言ってるのリンちゃん！　レン君にあげなきゃ！　お兄ちゃんなんかにあげるなんて、優しすぎるよぉ！」
リ「あ、GUMIちゃんもいる？」
グ「リンちゃんの手作りクッキー？　欲しいに決まってるでしょ、お兄ちゃんのからひったくる！」
レ「ていうかリン！　なんで俺にくれないんだよ！　昨日夜中にこっそりやってたのはそれだな！　隣にいなくておかしいと思ったんだぞ！　クッキー好きなんだから、くれよ～」
が「リン殿、ありがとうでござる……うう、かたじけない……」
　あらあら、がっくん泣いちゃった。
　でもレンに揺すぶられながらがっくんに声をかける事はできなかった。揺すぶられると、酔っちゃって気持ち悪くなる……。
グ「お兄ちゃん、このクッキー山分けね！」
が「え？　ま、待つでござる！」
グ「ふぉうふぁふぇふぁっふぁふぉん！　ふぁんふんふぁふふぁふぁふぃふぃふぇふぉ！」
ミ「リンちゃん、神威さん、GUMIちゃんは『もう食べちゃったもん！　半分あるからいいでしょ！』って言ってるんだよー」
　なぜか家の窓から顔をのぞかせて叫ぶミク姉。
　さすがGUMIちゃんの通訳。
ミ「それより、今日のおやつケーキだよ！」
リ・レ「今行く！」


　ケーキにみかんをのっけて食べた。
　ちなみにこのケーキは、MEIKO姉が買ってくれたもの。
メ「KAITOがネックレスくれたから、買ってきたのよ。私を父さん扱いするのはどうかと思うけど、私もケーキ食べたかったしね」
　KAITO兄に傷がついてなくてよかった。