知唯

窓を開けないで
服をはたかないで
お願いだから
お願いだから
マスクを掛けて薬を飲んで
ティッシュ抱えて目薬さして
憎っくきあいつ
細かいあいつ
無口なあいつ
黄色いあいつ...

この空の先には何があるのだろ
西の空に浮かぶ淡いうろこ雲
あの日あの場所で交わした約束
今は遠き過去大切な記憶
卒業をして引っ越し重ね
ふと見上げるの空を
共に過ごした都会の町で
いつもしていたように
この空の先には何があるのだろ
今日も空には淡いうろこ雲...

方向音痴な僕だから前しか見ない僕だから
ひとつ曲がり角を間違えてしまっただけだよね
ホントは君には逢わない筈だったんだよね
黙ってうなずいて欲しい
でなけりゃ僕は
いつまでたってもこの迷路から抜け出せない
昨日までのストーリー主役は君で僕は通行人その１
単なる一過性のその他大勢
台詞さえもらえない僕...

どうして、怖い顔をしているの？
そんな、顔をしていたんじゃ、
どんなに優しい人だって、きっと回り道してしまうよ。
友達は、待っていたって見つからない。
友達は、自分から見つけに行くものなんだよ。
どうして、辛い顔をしているの？
そんなに辛いんだったら、
何もかもみんな消し去って、忘れてしまえばいいの...

街はずれの小さな喫茶店
一番奥の窓際の席が君の指定席
待ち合わせの日は何故だか空いていた席
今でもそこだけ時間（とき）がとまっている
壁に掛かった小さな風景画
白枠の出窓から差し込む明るい日差し
洒落た造りの店にひとりの雇われマスター
今でも何も変わっていないのに
あの日もここで待ち合わせ
いつも君...

窓をつたう雨が私の心映してる
言い出せなかったただ一言がこんなに私を苦しめる
素直に心を打ち明けたいけど
もうすぐ私は遠い空の下何も言わずに旅立ちます
どうしてみんな壊れてしまうの
大切にしてきたこのひとときも一瞬で想い出に変わるのね
私の瞳に映るこの風景さえも
色あせた写真のようにただ秋風が通り過...

君がいた風景すべてが幻のよう
そこだけがstop motion
時間(とき)を忘れた水彩画
大事な色が見つからない
振り向く仕草何気ない
不思議な程に平凡な日々
君の口癖「平気だよ」
何故だかとても痛かった
守ろうとした瞬間
はじけ飛んだ二人の風景...