【童話?】不思議の国の黒いアリス 3
▼森の中で
「どこへ行くんだい、黒いアリス」
声を掛けられて、振り向いたアリスはぎょっとしました。木立の中に、白い顔がぼうっと浮び上っていたからです。
よく見るとそれは、瑠璃色の髪の青年でした。黒い服を着ているせいで、顔だけが浮き上がって見えたのです。脚を折り畳んで枝に座っている青年は、丸い色眼鏡の向こうから、にこりともせずアリスを見下ろしていました。
「どこって…取り敢えずチェシャ猫を探してます」
「ああ、それなら僕だね」
頷いて、青年は足音も立てずにアリスの前へ飛び降りて来ました。予想外の返事に、アリスはぽかんと青年を眺めました。
青年はアリスより頭ひとつ分くらい背が高くて、痩せています(手足に沿った細身の服が余計にそう見せるのかもしれません)。改めて見ると首元や腕だって露出しているのに、どうして先刻は顔だけが浮き上がって見えたのでしょう(考えても解りっこないのですが)。
短い髪に囲まれた白い顔を見上げて、アリスは首を傾げました。
「チェシャ猫?」
青年を指差して(お行儀が悪いですね)、アリスは不思議そうに尋ねます。
「そうだよ」
やっぱりにこりともせず、青年は答えます。アリスはまた首を傾げました。
「…耳は?」
「耳?」
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前のバージョンに続きますが、絵は変わりません。