ノウゼンカズラ
遠い日々の夏の終わり頃
誰かがワタシに手を振った
ゆめうつつ 彼方 恋しぐれ
流れる雲 千切れて 消える
揺らめき ふらふら踊る 影の向こう
貴方は 未だ帰らぬまま
鳴り響くサイレンの音 こだまして
せめて、せめて、灯りを送ろう
浅い夢 渇いた花も散らない
声を枯らして 叫んだっていい
雨となり どうか此処に還って
目が眩みそう 鋭い光の未来(さき)
変わってしまったワタシでも
貴方は気付いてくれますか
地に落ちた蝉の亡骸が
悲しそうにワタシを見ている
真昼の 空で見下ろす 月のような
冷たい色じゃ 寂しいわ
さんざめく通りの外れ 風が吹く
だから、だから、合図を下さい
深い霧 ワタシじゃ抜け出せない
なみだに濡れて 惑っている
強く腕を引いて連れて攫って
貴方のせいだ ひとりじゃ何もできない
拾い集めた欠片を積み上げ
貴方に似てる 記憶を探る
名前を呼んだきり 返事は無い
それでもいいわ ワタシは今 生きている
ワタシは今 生きている