セイレーン
【歌詞】
暖かい微風が春を運び
凍てついた大地を静かにとかして
咲き誇る花たちは色鮮やか
灰色の風景を覆い隠して
あの綺麗な 彼方の幻影も
ほんの少し手を伸ばせば届きそうで――
だけど
冷たいこの手で触れるすべて
枯れて崩れていく 壊れていく
それゆえ哀れな私には
眩しい世界に触れられない
終わりなく広がるこの青空
濁りなく透明な色に染まって
この世界は何もかも美しくて
悩みなどないみたいに微笑みかけて
重い枷に囚われたままなら
いっそ一瞬の想いに身を任せたい――
だけど
冷たい身体に触れるすべて
凍り砕けていく 壊れていく
それゆえ哀れな私には
やさしいあなたに近づけない
(ひとりきり 真っ暗な海の底で
何も知らずに生きていれば
ずっと静かに深い夢の中で
やすらかでいられたのに)
陽が落ちた砂浜に 夜が訪れても
懐かしい静寂には戻れないまま
閉じ込めた感情がひどくざわついて
忘却の残り火が心焦がして
闇に叫ぶ絶え間ない波濤は
遠く 永遠のしずけさを待ち望んで――
夜ごと 誰にも出逢わぬ果ての海で
ひとり口ずさむよ 滅びのうた
哀しき魂の輝きが
燃え尽き やすらぎ得られるまで