(non title)
12/7 大幅描き直しました。
僕の姉は俗に天才と呼ばれる。
彼女の頭脳はこの世界のあらゆる神秘を定式化できる。
彼女の好きなものは、外国の安い煙草とバッハ、
それから自分の研究対象(度々変更する)。
彼女の日常は、ほぼ全ての時間が研究に充てられており、
一ヶ月の睡眠時間は10時間にも満たない。
彼女は血の繋がった弟である僕のことを有機物の塊くらいにしか
認識していない。正確に言えば「ぼくのことも」だが。
僕はと言うと、天才とは程遠い凡人であるばかりか、
前科持ちの、できの悪い三流ハッカーときたものだ。
僕の日常は生まれてこの方、姉の研究成果の利権を守ることと
次の研究費用を調達するのに東奔西走してきた。
と、同時にその一連の行動によって
自分の幽し存在の輪郭をなぞってこれたわけでもあるのだ。
まあ、我ながら別段悪い人生だとは思わない。