亡國浪漫
白髪の亡骸を 虚空に捧ぐ
気泡の浮かぶ 腐海の奥で
未だ彷徨える 精神(こころ)
朽ち果てた楼閣を 目の前にして
手垢に塗れた 叙情だけが
渇く自我を 慰める
廃墟を無数の 羽虫が飛び交う
神話の彼方の 最早死にかけた父よ
似而非造物主(エセデミウルゴス)よ
赤黒き月を仰ぐ
手の甲に 星を刻むよ
あの旗の下で 何を誓おうか
終わりなき世の めでたさよ
空白の広間には 窶(やつ)れた犬が
病みつかれた その魂を
白い虫が 食い荒らす
始まりを知らずして 全てが終わる
狂い咲く 彼岸の花が
夢の中で 呼び掛ける
瓦礫に埋もれた 正義の表徴(しるし)よ
手堅く握った 使い古された夢の
信仰告白を
あの空を 過(よ)ぎる何か
神の手は 全て消し得るよ
ただ拘束衣を纏い 何を呪おうか
終わりなき世の めでたさよ
赤黒き月を仰ぐ
手の甲に 星を刻むよ
あの旗の下で 何を誓おうか
終わりなき世の めでたさよ