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白い頬の上で、涙がはじけた。
必死の形相に反して、彼の手に力は込められていない。
彼女の詰めた醜い爪痕から、じわじわと血がにじむばかりだった。
「……逃げてくれ」
少年がかすれた声でそう言った。
「どうして?」
「僕は君を殺せない。だから遠くへ逃げて。あの子の目も、僕の手も届かない場所...悪ノ一端(下)
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昔々あるところに悪逆非道の王国の
頂点に君臨するは齢十四の王女様
悪ノ一端
あのころ、僕たちの世界は狭かった。
美しい調度品に囲まれた城の一角。それだけが僕らのすべてだった。
金を思わせる黄色を基調とした城内も今は暗く、何もかもが息絶えてしまったかのように色褪せてしまっている。
色褪...悪ノ一端(上)