蘭ノ助

うさぎなんて関係ないの
時間なんて私に必要？
急げなんて命令しないで
何だって私の思い通りよ
ママはいつでも口煩いわ
穴に落ちたら理解できる？
手を叩いて怒らないでよ
時のリズムが崩れちゃうわ...

今日も赤い紅ひいて
黒い着物を羽織ります
小さな童を従えて
ひらひらお部屋を回ります

農民、商人、お武家様
赤い銚子で酒注ぐ
睡眠薬で早仕舞い...

洗い物がたまってる
気が重い
テレビ見て昼寝して気がついたら夕方
急いで家事を片付ける
タイムリミットまで１時間
ただいまの合図でにこにこお迎え
ビールついだら急げ夕飯だ
今日も一日ご苦労様
明日も変わらずなまけ主婦
ちょっとは動こうなんて思ったけど...

冷たい手を掴んだ時
ひやりと気持ち良くて
快楽に浸るけれど
明日も氷のような手に
昨日の行為を思い出すのです
ぬるま湯に浸かった数日前
犯行日の当日に
私の視界は紅く染まるの
唇に紅をひいて
あなたの前でくねらせて...

今日も朝から邪魔にされます
夕方にはまた顔を出すよ
「おはようさん」して刈り取られ
「おばんです」して少し生きる
長くて半日生きられる
主が休(きゅう)なら尚生きる
一本残るあいつが憎い...

冬になるとやってくる
オレンジ色に色づいて
みんなのコタツにやってくる
お家はいつもギュウギュウなの
わたしを食べて
わたしが先よ
たまにはすっぱい憎い奴
ほんのり香る
あなたのカオリは
お手々についても嫌じゃない...

今日もまた帰りが遅い
今日もまた残業なの？
明日は上司の接待
明後日は何があるの
いつも私寝るのは朝
いつもあなたの帰り待つ
冷えたご飯の前でポツリ
早く帰ってきて
一つの嘘が二つになって
二つの嘘が三つになって...

夕焼け、放課後、教室
影で見えない顔半分
何を考えてるか
わからない貴女
見つめる目と
吸い込まれる心
鼓動がぶつかるこの距離で...

道の黒さがわかるように
風の青さが見えるように
いつもいつでも側にいて
きっとわたしを守っている

日の明るさが肌を突いて
穴が開いても歩いていこう

今生かされてるこの命さえ...