noncommittalの投稿作品一覧
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雨の日に暗い気分になるのは、雨のせいで外に出れず、雲のせいで昼でも暗く、自分の周りの空間を認識的に狭く感じ、圧迫感を覚えるからだそうだ。
ところで、高い所から見る風景というのはとても広く感じる。
高所からの景色というのは壮観だ。何でもない風景でさえ、素晴らしいと感じる。
人は自分がそれまで住...仮
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9
部屋に戻ると好子が起きて椅子に座っていて、入ってきた私に尋ねた。
「あ、聡美ちゃん。どこ行ってたのさ」
私は返答に少し戸惑って、
「繭にお別れしようと思って」
そう応えた。
「ふうん」
私はもう一つの椅子を好子の隣に持ってくると、それに座った。
雨と風は少しずつ弱くなってきているよう...仮
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8
階段を上がると、一階と同じようにずっと奥まで続く廊下が見えた。天井に吊された明るい電気が、それらをはっきり照らしていた。
左右には幾つか扉があって、右側三番目の襖の部屋。和室になっているそこが、繭が死んでいた場所だ。
近づくと、血の匂いに混じって、嫌な匂いがただよってくる。
その襖の間...仮
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5
心地よい微睡みの中、気がつくと雨が降っていた。ザーザーとうるさい雨音が、耳に引っ付いて離れない。
「んぁ……」
目を開けると卓の上に散らばった麻雀牌と点棒が見えた。それと雀卓に涎を垂らして寝ている先生の顔。
何とも情けない……
やけに重い頭を上げて身体を起こすと、目の前で3人が麻雀卓に...仮
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6
気がつくと布団で寝ていた。
外から聞こえる雨音は、依然として強いままで、木の雨戸のせいで外を見ることは出来ないが、きっと変わらずに雨は降っているのだろう。
隣には好子がいて、椅子に座っていた。
聡美が身体を起こすと、それに気づいた好子が袖で顔を拭った。
「好子…私……あぁ」
頭...仮
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7
キッチンでは先生と久下さんがテーブルで向かい合って座って、話しをしていた。
「先生……」
私が呼ぶと二人とも暗い顔を此方にむけた。
「あぁ聡美さん。具合は大丈夫?」
先生が不安そうな顔で尋ねてくる。目はすこし赤かった。
「ごめんやで。おまえさんが倒れた時とっさに支えようとしたんやけどな。頭...仮
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4
リビングには四人の人物が既にいた。一人は久下さん。
そして、
「あ、みんな来ましたね~」
料理を運んびながら笑顔で告げる少女。
佐藤 繭。
好子と同じブレザーの上にエプロンをきていて、カールのかかった白く長い髪がとても綺麗だ。彼女は料理の乗った皿を机に並べていた。歳は私の一つ下。いつも...仮
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3
玄関の前では、二人が話をしていた。
「やっと来たっス。あんなとこで突っ立って何してたんスか」
壁に背をつけてしゃがんでいた、青い髪の少女が少し呆れた口調で言った。
「うん、お待たせ。ちょっと」
小さく息を吐いて、肩に掛けていた鞄を下ろす。中は自分と好子の着替え、それとその他。出発するとき...仮
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2
空が少し赤くなったころ。歩いていた道の先の木々が開け、そこに建物が見えた。その隣からは、煙が上がっていて、白く、細く、不規則に歪みながら空へと昇っている。
「ここでいいよね?」
私が隣の好子に尋ねると、
「多分」
と彼女は返した。
「やっとついたね」
「うん」
それは二階建...仮
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[1
森があった。
平坦な地面に、鬱蒼とした森が広がっていた。背が高く葉が細い木と、幅が広く冬に葉を落とす木が混在して、何種類もの色がゴチャゴチャに混ざっている森だった。日が当たらない地面には、薄く苔が生えていて、何かの写真集などで取り上げられそうな、良く言えば「自然そのものの神秘的な森」。...仮
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『名言』と呼ばれる言葉がある。
偉人の優れた考えや視点がこめられた言葉のことで、それらは人々に新たな知識や視点を与え、時に道を示し、奮い立たせ、あるいは慰める。と、そういうことらしい。
しかし、所詮それは成功者の言葉。ただの強者の考えにすぎないと、悲観視する者は少なからずい...仮