マスターの家に帰ると、誰もない。
この雨の中何処に行ったのだろうか。
不思議で仕方なかった。
畳の上においてある座布団に座り、天井を見上げる。
「・・・・。」
彼の部屋もこのマスターと同じ部屋。でも
匂いや雰囲気は全然違う。彼の部屋は
音楽に満ち溢れていた。
「何で彼に買ってもらえなかったのかな・・・・。」
なんてふと思ってしまったりする。
そうすればもっと前から一緒にいれた筈・・・・。
天井を見るのをやめ、マスターの使っているPCを
覗く。何ヶ月ぶりだろう。マスターのPCを見るなんて。
「・・・・なにこれ。」
そこに出たのはデスクトップに何かのキャラクターの絵が
貼られ、アイコンもキャラクターだった。
歌のファイルを見ると、どれも私の歌では無かった。
「・・・・今まで一体何を・・・・?」
私がいなくなったのを心配もしないでこんな事ばかり・・・・。
女の人の裸の写真等のファイルが何通も。
「あ・・・あ・・・・。」
私は思わず声を失う。私のマスターは一体何なのか。
そして一体何の目的で買ったのか。分からなかった。
”ガチャ”
「!?」
ドアの開く音が玄間から聞こえた。
「おお!ミク帰ってきたのか!」
「・・・・マスター。」
「今まで何処に行ってたんだ?心配したんだぞ?」
「心配・・・・・。」
「体びしょびしょじゃないか。さ、一緒に風呂でも・・・・。」
「変態・・・・。」
「え?」
私は立ち上がる。
「この変態!何考えてるの!?」
「な、何が??」
「PCの中は変な物ばかりだし、私の歌は一つもない!
ただ、体を触りたいだけなの!?」
「主人にそんな口をしていいのか?」
「あなたなんて主人じゃない!」
「ほう、じゃあ契約を取り消してもいいのか?」
「勝手にして!」
私は、部屋を出て行く。こんなマスターは嫌だ。
我慢出来ない!私は雨の中走る。
「なんで・・・・なんで・・・・!」
私は涙を流しながら走る。坂を上り、草むらを走る。
気が付けば、おじぞうさんと桜の木がある場所に
着いていた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・またここに来ちゃった。」
桜の木の所に座ると、桜の木に背中を預ける。
ここが一番落ち着く。何故か。彼の居心地と同じくらい。
「・・・・?なんでこんな所に女の子が?」
「え・・・・?」
私の聞いた声は誰かに似ていた。だ、誰・・・・?
「こんにちわ。こんな雨の中一人?」
「あ、あなたは・・・・?」
「僕?僕はボーカロイドのレン。君は?」
「わ、私初音ミク・・・・。ボーカロイドです・・・・・。」
「わぁ、僕と同じだ!よろしくミクさん♪」
「う、うん。よろしく・・・・。」
レン君は私の手を握ってくる。声、目の色、雰囲気が
彼にそっくりだった。
「ミクさん、何でこんな所に座ってるの?」

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  • 非営利目的に限ります

【小説】雨の中できっと(その3)

雨の中できっとその3。
その1とその2もあります。

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投稿日:2008/04/13 21:23:15

文字数:1,159文字

カテゴリ:その他

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