A
両の手差し出すも 花弁はすり抜け
美しき螺旋の 円弧を描いて
B
土に落ち 眠る私に衣着せば
童歌 今にさんざめく合いの手
S
誰がためにたゆたい
何のため開き 散るのですか
照らすは満の月
只 穏やかに(現せば)
宵の寂しさ隠します
A
百と余り生きる 往年桜木
十五で此処に朽ち 四十の年月
B
瞬きの 数だけ季節巡らせども
何一つ 姿[ワタシ]は変わることは無く
S
螺鈿の髪飾り
濡れ羽色の髪に着けたまま
永い時が故に
只 密やかに(消えてゆく)
想いは馳せて流れます
C
来る人も 去る人も絶えず
花の顔[カンバセ]を称えても
其処に在る娘の姿は
識る者無く
S'
千の花弁が舞う 月明かり纏う其の夜
一年に一度だけの 訪れる彼の人
願わくば違わぬ 約束を叶えましょう
遠き日の涙終わり 触れ合える時まで
――永き夢幻でした
~かな読み~
A
りょうのてさしだすも かべんわすりぬけ
うつくしきらせんの えんこおえがいて
B
つちにおち ねむるわたしにころもきせば
わらべうた いまにさんざめくあいのて
S
たがためにたゆたい
なんのためひらき ちるのですか
てらすわまんのつき
ただ おだやかに あらわせば
よいのさみしさかくします
A
ひゃくとあまりいきる おうねんさくらぎ
じゅうごでここにくち しじゅうのとしつき
B
まばたきの かずだけきせつめぐらせども
なにひとつ わたしわかわることわなく
S
らでんのかみかざり
ぬればいろのかみにつけたまま
ながいときがゆえに
ただ ひそやかに きえてゆく
おもいわはせてながれます
C
くるひとも さるひともたえず
はなのかんばせおたたえても
そこにあるむすめのすがたわ
しるものなく
S'
せんのかべんがまう つきあかりまとうそのよ
いちねんにいちどだけの おとずれるあのひと
ねがわくばたがわぬ やくそくおかなえましょう
とおきひのなみだおわり ふれあえるときまで
ながきむげんでした
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