A1
記憶擽った
微かな呼び声
滲む夕焼に
包(くる)まれ消えた

止める足の下
背を伸ばす影に
無くした心の
在り処尋ねる

B1
花が散る毎
霞に溶ける世界は
微笑みの紅が映える

S1
舞い踊る蝶
答えを求めて彷徨えど
見逃さなければ
行ける気がする
腕の中には
古びて華やぐ鞠ひとつ
手放さず進む
語らぬ未来へと


A2
不意に燻った
傷に覚えなく
閉ざされた胸が
僅かに軋む

手鞠蹴鞠の戯
絡まりて繰りて
綾を成す明日を
遠ざけてゆく

B2
もしも此の時
此の世が止まるとして
一人でも気付くだろか

S2
白く舞う蝶
捕えて　此の身へ還すなら
懸想の過去さえ
甦るだろう
赤青黄色　組み合い
彩る球体は
予知見の水晶球(たま)には
あまりに
遠過ぎる

C
夜は朝に
四季は返り
道の向こう
花は開き
声に惑う
“此処においで”
彼の思い出
頬を流れ

S3
舞い踊る蝶
誘うが儘に歩を重ねる
目隠し手招き
雛の足取り
光に惹かれ
運命に吊られたとしたって
最後の小手鞠
枯らさず行こう

S4
白く舞う蝶
此の手の籠の中で泳ぐ
満ち引く追憶
靄は流れて
朱唇の紅を　拭いて
駆け出す手鞠姫
鮮やかな迷宮
私はもう居ない

きっと




【譜割り・()は一音分】

A1
きおく
くすぐった
かすかな
よびごえ
にじむ
ゆうやけに
くるまれ
きえた

とめる
あしのした
せをのばす
かげに
なくした
こころの
ありかたずねる

B1
はなが
ちるごと
かすみに
とけるせかいは
ほほえみの
べにがはえる

S1
まいおどる(ちょ)う
こたえを
もとめてさまよえど
みのがさなければ
ゆけるきがする
うでのなかには
ふるびて
はなやぐまりひとつ
てばなさずすすむ
かたらぬ
みらいへと


A2
ふいに
くすぶった
きずに
おぼえなく
とざされたむねが
わずかに
きしむ

てまり
けまりのぎ
からまりて
くりて
あやを
なすあすを
とおざけてゆく

B2
もしも
このとき
このよが
とどまるとして
ひとりでも
きづくだろか

S2
しろくまう(ちょ)う
とらえて
このみへ
かえすなら
けそうのかこさえ
よみがえるだ(ろう)
あかあおきいろ
くみあい
いろどる(きゅ)うたいは
よちみのたまには
あまりに
とおすぎる

C
よるはあさに
しきはかえり
みちのむこう
はなはひらき
こえにまどう
ここにおいで
かのおもいで
ほほをながれ

S3
まいおどる(ちょ)う
さそうが
ままにほを
かさねる
めかくしてまねき
ひなのあしどり
ひかりにひかれ
さだめに
つられたとしたって
さいごのこでまり
からさずいこう

S4
しろくまうちょう
このての
かごのなかで
およぐ
みちひくついおく
もやはながれて
しゅしんのべにを
ぬぐいて
かけだす
てまりひめ
あざやかなめい(きゅ)う
わたしは
もういない

きっと