もしもこの脚がなければ
どこへも行けないでしょう
行く宛などないけれど
もしもこの手がなければ
何にも触(ふ)れずに
何も生み出さずに過ごすでしょう
この眼がなければ
汚いものなど見ずに
想像に生きるでしょう
この耳がなければ
鳴り止まぬ 苦しむ声を
もう聞かずに済むでしょう
もしも羽があれば
空へ飛び立って
ちっぽけな街を見渡したい
鰭があれば 海の底
光の届かぬ果てを目指してみたい
この頭がなければ
こんな想像に囚われずに
泣かずに済むのかな
それでもまだやまぬから
やめることはできないから
重たい身体を抱えて
また自分を生きよう
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