このような状態になって、どれほど經ったのだろう。
感覺の鈍さ、擴散する光。
恍惚の意識、分散する私。
ああ、心とは、
心の臟に染み付いたものではなかったか。
ああ、私とは、
腦髓が生み出したものではなかったか。
波に碎けた私は、今、
何故波の音を聞き、搖れを感じ、
光を暖かく思うのだろう。
頭蓋はとうに漆黒に抱かれ、
纏わり付く尾びれを追い拂うことすらできず、
ただ、がらんどうの穴ぼこだけが、遠い空を仰ぐ。
檻を捨てた私に眠りはなく、
内と外の隔たりもない。
私は、次第に希薄になり、感覺は廣がり續ける。
強い太陽の光を、冴えた月の光を、凪いだ風を、
泳ぎ囘る魚の群れを、搖れる海草を、
事象のすべてを受け止めながら、
このまま循環の輪を廻るのも惡くはない。
私という物質は、いつしか水に崩れ、海中を雪のように漂う。
私という精神は、いつしか水に溶け、海中を波とともに漂う。
そうして、1分閒に18囘、
懷かしい大地に口付けをしようぢゃないか。
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