静寂をまとう坂 言問わぬ杉木立
山際にたちのぼる 朝もやを噛んだ風
さびしい鳥居 くぐればよみがえる
あなたを見送った おととしの神無月
あかいあかい花緒が切れた 追いかけられない背中
きっと帰ると指切りした 小指に残るぬくもり
黄昏に肩たたく あやかしのいたずらに
振り返りさがしては からすにもからかわれ
金の入り日影 参道を駆けてゆく
お囃子が鳴ってた 夕暮れは遠くて
あかいあかい花緒が切れた 何気ない拍子にふっと
きっと帰ると指切りした 小指がしびれて痛い
百雷 閃光 溶け落ちた鐵
命の行く末を 知る者もいない夏
無事のたよりは とうに途絶えていた
嘘つきで無慈悲な 盛夏は燃え尽きて
あかい紙切れが連れ去った あなたは今どこにいるの
長い列車から降りてくる 見慣れぬ片腕の人
あかいあかい花緒が切れて 裸足で走る私に
きっと帰ると指切りした 右手をかざして見せた
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