(4)

 「レン…!」

 あれから10年ちかくの月日が経っています、やせ細ってはいるけど男らしくなっていました。体中が汚れていましたが、目だけは澄んでいてまっすぐリンを捉えました。リンは直ぐに牢屋の鍵を開けてレンを連れ出そうとしました。しかしレンはただ力なく微笑むだけで外に出ようとはしません。リンにはわけがわかりません。レンは切なげにうつむいて言いました。

 「お父さまとお母さまのことは聞きました。女王就任おめでとうございます。確かに今の女王さまのお力を使えば私一人を牢屋の外に出す事なんて簡単な事だと思いますが、このお城に残っているのは僕の事を良く思っていない人ばかりでございます。あなたさまへの風当たりも強くなることでしょう。そもそもお城のような贅沢な生活は私めのようなものには似合いません。あなたさまのお姿を一目見られただけでも十分でございます」

 そういって頭を下げるのです。まるで召使みたいな言葉を使って自分と距離を置こうとするレンに、リンはとても傷いて、悲しそうな顔をしました。その顔を見るとレンの心までが傷ついたように思われました。

 「どうかそのようなお顔をなさらないでください。私のようなもののために流す価値のある涙など一滴もある筈がございません。もしもこれを大臣たちが見たらなんと思うことでしょう」

 そう言い終わるか終わらないかのうちにリンはレンを強く抱きしめました。女王さま、汚れてしまいますとレンが言おうとする前にリンが泣きながら言いました、

 「お願い、レン。わたしを一人にしないで…。召使も兵隊も大臣もみんな私の命令を聞いてくれるけど、わたしの事を本当に考えてくれる人なんてこのお城にはあなた以外誰もいないわ。みんな自分のことしか考えていなくて、わたしのことだって邪魔になったら何時でも放り出してしまうつもりなのよ。お父さまもお母さまもいなくなって、私はこのお城でひとりぼっちになってしまったわ」

 レンはその言葉を聞いて、そしてそれが本当の事だと分かって、とてもショックを受けました。綺麗な物に囲まれて、王様に愛される可愛らしいリンはみんなに大切にされて幸せな生活を送っているのだと堅く信じて疑っていなかったのです。自分が牢屋の中で隠れるように生活している間にそんな風にリンが傷ついていたのだという事を、レンはまるで自分の責任であるかのように感じて、打ちひしがれるような思いでした。レンにとっては自分がとんな酷い場所にいようとも、リンが幸せでいてくれさえすればよかったのです。レンはリンの震えている肩を強く抱いて言いました、

 「ずっと気付いてあげられなくてごめん。でもこれからはたとえ世界の全てが君の敵になろうとも僕が君を守るから」



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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悪くて可哀想な双子 (4)

!! CAUTION !!

これは悪ノP様の言わずとしれた名作「悪ノ娘」と「悪ノ召使」を見て感動した上月がかってに妄想を爆発させたそのなれの果てです。

・当然の事ながら悪ノP様とは何の関係もありません。
・勝手な解釈を多分に含みます。
・ハッピーエンドじゃありません。(リグレットとの関連も無いものとしています)
・泣けません。
・気付けば長文。(つまり、要領が悪い)

以上の事項をご理解いただけた方は読んでみて下さい。

閲覧数:3,245

投稿日:2008/07/03 00:12:08

文字数:1,148文字

カテゴリ:その他

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