夕焼け空に逝く

『夕焼け空に逝く』
　　
そう、たとえば。

僕が幸せになった世界。

そう、たとえば

君が生まれなかった世界。

第三次世界大戦が起きている世界。

僕が零戦から手をふり去った世界。

人類が選ぶ世界。

そして捨てられた片方を忘れるよ

エンジン音の隙間に置いてけぼりの　僕の心には

いくつも別れの記憶が眠る　

さらば　故郷への帰り道よ

もう救うことができない君よ　さらば


そう、これから

神様が僕を捨てた世界。

そう、いつかは

君の心臓がとまる世界。先に逝くよ

どれだけ忘れまいとしても僕らは忘れる

何の罪悪感もなく僕らは忘れる

空が赤く染まる

そして片方をすべてと思い込んで生きるよ

可能性の隙間に置いてけぼりの　僕を待つ君は

いつまでも飛行機雲を見つめる

そして　この戦いが終わるころには

僕らの足跡　ちゃんと消えるよ　さらば



君以外の希望を僕は背負って　エンジンをさわれば

シニカルに零戦は僕を笑う

可能性の隙間に置いてけぼりの　僕の心には

いくつもの大切な記憶があるよ

いつかホントの平和がくれば

僕が零戦と沈む意味もあるさ　さらば　さらば