沖から吹く潮風が
真っ赤に腫れた目に滲みる
散ってしまった花は
元に戻ることはない
岩を穿つ波よ
この思い出も拐ってくれますか
灰色の岬を見つめては
一筋の涕が頬をつたう
悴んだ手を握ってくれた
貴方は
もう遠い人
哭きぬれて震える声
絞り出そうとも
貴方に伝えたかった
言葉は風に消える
猛り狂う飛沫が
涕も洗い流してくれる気がして
灰色の心に海猫(ごめ)たちの
劈く声が突き刺さる
溢れる涕を拭ってくれた
貴方は
もう遠い人
もういっそ全てを投げ捨てて
この波に身を任せたら
もう一度もう一度だけでも
貴方に
逢えるでしょうか
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