「空を見に行こう」
「…え?」
私の返事を待たずに走り出した彼は、だんだん速度を上げ、問題の『傘』との距離を縮めてく。
私は何もいえなかった。
ただ顔に当たる雨から逃れるように、彼にひたすらついていった。
ズゥンと音がしそうなほどに、重苦しいほどの『ソレ』は、私たちを拒んでいるのかいないのか。
そんなことは関係なく、彼が押した扉は簡単に開いた。
「…だめ…」
「…?何か声しなかった?」
「いや、…何も?」
少し周りの声に耳を傾けても、ただ雨が降る、耳に慣れた音しかしない。
「ねぇ…どこいくの?」
「空を、見に」
そういって彼は、私が大事に抱きしめる絵本を指差す。
「絵本の、空?」
「うん、もう…ダメだから」
重い一言は胸にストンと落ちた。ああ、そっか。そう、なんだ…。
「それとも、『傘の下のまま』がよかった?」
不安そうな彼の顔に安心させようと笑おうとするけど、うまく笑えなかった。
どうして…。
「見に、行こ…大丈…」
今にも泣き出してしまいそうで、崩れそうな私を、彼は優しく。
やっぱり優しく手を握って、走り出した。
続く
コメント1
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ご意見・ご感想
樋浦きらこ
ご意見・ご感想
うん、私も同じ解釈です←
突然入ってきてすみません・・
「綺麗すぎる恋愛...(略)」のフレーズ、world's にぴったんこですねー。
胸に響きました。お付き合いしましょうか(黙
2010/04/04 16:33:56
紅亜
お付き合いくださいますかww
よろしくお願いしますww
このふたりにはいろんな意味で幸せになってほしいですねー
続きはぼちぼち書いていきます><
メッセージありがとうざいました!
2010/04/04 22:22:39