脳に絡みつく甘い腐臭が、御前様の面影を遠ざけてしまう。
私はひとりで虚無の庭から、曖昧模糊歪む世界を夢想している。
燃えるスペクトラ、チャールストン。滲む赤の残像が掻き消してしまう。
殺すのは理性。残るのは何?傷む薔薇の幻想に霞んで見えない。
かつて愛は御前様の姿をしていた。
かつて此処は薔薇の咲き匂う庭だった。
そしてそのいずれも、いつの間にか姿を変え、酷く醜いものに成り果てた。
狂おしく舞う火だるまの蝶。螺旋描き暗涙の灘に沈み行く。
私の理性は饐えた徒花、薔薇の檻の幽囚にすぎないと。
かつて愛は御前様の姿をしていた。
かつて此処は薔薇の咲き匂う庭だった。
そしてそのいずれも、いつの間にか姿を変え、酷く醜いものに成り果てた。
甘い腐臭が、脳に絡みつく。
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