針水

紡ぎ上げた糸の形が見えなくても
きっと誰かとつなぐから


手に入れたはずの翼は
音も無くボロボロ崩れ
共に水面を行く微笑に泣いたら

痛みに溺れかけて浸透
夢にすら針が
まとわり疲れクラクラに
活ける生ける眩暈まで


探してたから　錆び付く匂いに飽きてたのかい
落ちかけた今　薙いで
腰まで降りた　黒の濁水は心地いいかい
透明まで行く？


淀む血に居付く下り上り激しく
篭る水なら
はらむ思いに纏い疲れてなお進むから

剣に従うことも出来ず一人全部果て生き
苦い水でも意識の全てで
這いより抱きしめ沈むは針水か


隠れた雪に思い偲ばせ
寒ささえ愛しく
古い絆の穴を掘って失くして

ガラスの板に書かれた言葉は
「本当に…本当に？」
喚きながら砕いたら
全て針に変わっていた


いつかきっと　理屈は緩み
心地よい水に変わる　僕は歌うよ
そして愛を探し見つけ
今　笑うよ


「うそつき」



潜り続けた　欺瞞の膜は頑丈かい
見せつけられて　泣いた
頭まで沈み　見える景色は我慢できるかい
其処までが　底で


偽善者だけが舐めて溶ける
琥珀に抱かれ束縛
気づくことが出来た貴方の笑みで背を伸ばす

淀む血は無く上り下り自由に
泳げる水なら
抱きしめた思い創り纏い　なお進むから

「もうこれで分かっただろう　君は不自由な自由さ」
苦い思いも身体の全てで
見えない力とするのさ針水で