少年はただ一向に足を前へ、前へと動かして歩いている。差している傘が覆いきれなかった、反対の手で持っている紙袋の一部分だけが濡れて色濃い。商店街を抜けて信号のところで立ち止まった頃にはもう雨はだいぶ小降りなっていたので、少年は傘をたたみ、青信号を確認すると横断歩道の上をぴちゃぴちゃと渡った。
マンションの一階でエレベーターに乗って帰宅し、紙袋をテーブルの上に置きながら着ているお気に入りのジャンパーから習慣的に携帯電話を取り出すと、画面にメールが一通来ていることを意味するアイコンが表示されていた。
メールを確認し、木の椅子に腰を掛けるとすぐに、ドアのインターホンが鳴った。よいしょ、と少年は椅子から立ち玄関へ向かいドアを開けた。
「メールの割には早かったですね」
「それ、送ったの30分前だけど」
家に入ってきた若い女性はヒールを脱ぎながらそう言った。
「今日はどんな用事なんですか、GUMIさん」
「その呼び方はやめて。私はもうそっちの世界からは足を洗ったのよ」
足を洗った、なんて随分嫌味な言い方をしてくれるものだ、と思いながら少年は素直に彼女の頼みに応えた。
「恵さん、今日はどうしたんですか」
「畑でいいキャベツができたからおすそ分けしようと思って。それにリンちゃんのことも気になるし…最近どう?元気?」
「…まあうまくやってますよ」少年は少し俯き加減に返答した。
「ふうん」
「ところで恵さん、考え直してくれないんですか」
「何を」
「歌です。もう一度、テレビに出たり、CDを出したりする気はないんですか、やり直しませんか」
「答えはノーよ」恵は眉をつりあげた。「あそこは私にとって苦痛でしかないの。…いや、苦痛以上の存在よ」
「スポットライトを浴びたあなたは誰よりも輝いていました。苦痛だけでは無かったはずです」
「あの頃はまだ若かったのよ」
「歌さえ上手ければ年齢なんて関係ない。それにあなたはまだ27じゃないですか」少年の声は少し荒くなってきている。
「もうやめて。私が歌手に戻るのを拒んでいる以上、あなたに遂行権はないの。それに私は今の生活に満足しているの。あなたには農業の楽しさなんて分からないのでしょうけど」恵は少年のの肩に手を置いた。
「あなたこそ歌手の世界をわかっていない!それに僕はあなたが畑を耕しているところなんて正直想像できない。アイドル歌手としてあんなに人々を虜にしてきたあなたがここまで成り下がるとは…」少年は手を振り払いながら叫ぶように言った。
「いいえ分かっていないのはあなたよ!成り下がるなんて失礼な…!私はちゃんと記者会見で引退宣言をしたわよ…自らの意思で降りたの。それにあなたも知っているでしょ、私がどうして歌手を辞めたのか。あの出来事の事を」
「ええ、もちろん知っていますよ。だからこそ僕はあなたが理解できない。立ち向かうこともせずに相手の思うままにされて…あれでよかったんですか!」
「あれでよかったの。あれが正しかったのよ」恵はため息をつきながら、持ってきた手提げからたくさん入っているキャベツを出し始めた。
「いいえ、あれは正しい判断ではなかった。本当にいいんですか。ミクさんも待っていますよ」
恵の手が止まった。
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lel twa jomenti
al fo letimu...
el tsah tjumeni
jah hun mu...
lel twa sjah lenti
al fo letico...
ol tah ...Jutenija
DATEKEN
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ファントムP
ハローディストピア
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BPM=200→152→200
作詞作編曲:まふまふ
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ぱっぱらぱーで唱えましょう どんな願いも叶えましょう
よい子はきっと皆勤賞 冤罪人の解体ショー
雲外蒼天ユート...ハローディストピア
まふまふ
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