昔々の話をしよう
暗い冷たい地面の下に 盲いた(めしいた)ヘビと醜いミミズ
二人寄り添い暮らしておった
ミミズはいつもヘビのためにと その日のことを話して聞かせた
ヘビはいつもミミズのためにと よくとおる清い声で歌った
「あぁ、幸せだ、君がいる。闇より寒い土の中、二人でいれば温かい。
たとえこの眼が見えずとも、君がいるならかまわない・・・。
今日も君のために歌おう、優しい君のためだけに・・・。」
儚く甘くたゆたう歌に ミミズは今日も抱かれて眠る
ある日ミミズはフと考えた
自分のひどくしゃがれた声が ヘビのように綺麗になれば、と
そしてあくる日ヘビに話した
「あぁ、幸せだ、君がいる。夜より暗い土の中、二人でいれば怖くない。
君はその眼が見えずともかまわないとは言うけども、
ひとつどうだい、僕の眼と君の声を取り替えるのは?」
夜より暗い 闇より寒い土の中
盲いたミミズは独りで歌う
光を手にしたヘビは外へと旅立った
もっと色んなものが見たい、と
夜より寒い 闇より暗い土の中
孤独なミミズの歌だけがこだまする
「幸せだった、君がいた。光届かぬ土の中 二人ならば平気だった。
君がいるならそれでいい・・・ここに独りは辛過ぎる・・・。
君のために歌っても、聞いてくれる君は・・・いない。」
光届かぬ地面の下で 光求める 孤独なミミズの 美しい歌
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