わたし生き血を啜る吸血鬼
二千年を生きたヴァンパイア
今宵も誰か生贄を求めて
しらりすらり陰を行く

ねえわたし我が儘だから
輸血パックとかじゃダメなのよ
ほらこんな風に人の首筋に
直に牙を立てて咬み付いて

（またやっちゃった……）

どんなに拭っても取れないヤな後味
血を吸うのなんてもうイヤなのに
どうしても抑え切れないこの衝動
ごめんなさいねごめんなさい

偶にはわたしの事に気が付いて
優しい言葉を掛けてくれる人もいる
ずっと独りぼっちで生きているわたし
淋しくてつい縋ってしまうの

だけど人は寿命で縛られてるから
みんなわたしを置いて逝ってしまう
あゝあの人がくれたマドレーヌ
最高に美味しかったのに

（味なんてわからないけど……）

置いてけぼりはもう懲り懲りなのに
ふと気が付けば探してる次の相手
ねえねえそこの道行くあなた
悲劇しか見えない恋愛はいかが？

不老不死なんていいものじゃないのよ
それがわからないお馬鹿さんが
今夜も哀れに近付いてくるから
わたしそっと殺してあげるの

（どうかお幸せに……）

そしたら何故だかみんなが怒鳴って
悪魔だ死神だって罵るのよ
ねえわたし何か悪い事した？
ねえわたし何か悪い事した？

ねえその銀のピストルは何？
その杭は何？その十字架は何？
それでわたし殺す気なの？
ねえわたし要らない子なの？

でも残念お生憎さま
本物の不死身なのわたし
そんな物で死ねるなら
わたし涙なんて枯れなかった