注意
※本考察には劇場版まどかマギカ-反逆の物語-の致命的なネタバレが多分に含まれております。まだ劇場に足を運んでいない方はここに限らずうっかりネタバレを踏んで「アタシってホントバカ・・・」なんていう風にソウルジェムを濁らせないようご注意下さい。また、うっかり覗いてしまったせいで呪いが募って魔女化しても当方では一切の責任を負えませんので併せてご了解下さい。
※本考察には多分に著者の妄想が含まれています。それは誰か他の方の解釈を否定するものではありませんし、公式でもない唯の一ファンの妄言に何が正解であるかというものでもないので、あくまで解法の一つとしてご覧下さい。
※前編はこちら http://piapro.jp/t/tfFd
こんばんわございます。いつもニコニコ素敵な歌詞に這い寄るキジ目キジ科ヤケイ属。あなたの心のインキュベーター鶏です。あぁん、ほむほむそこは・・・かゆ・・・うま・・・
前回の考察が僕にしてはずいぶんあっさり纏まったなと思ったら肝心な技巧面の部分に全然言及できていませんでした。プロの技巧を目の当たりにしてソウルジェムを真っ黒にする計画がこれでは元も子もありません。なんということでしょう。あたしってホントバカ・・・。
さて、前回と重複する部分も出てきてしまうかもしれませんが、この歌詞の何が凄いかっていうのをちまちま語っていきたいと思います。この歌詞の凄いところを語るために先ずは、鶏さんが今までどの歌詞講座でも触れてこなかった歌詞の超絶最終決戦兵器「アッパーストラクチャーリリック(造語)」について解説していきたいと思います。
歌詞において世界観の統一というのは一つの重要な要素になります。学校が舞台であるなら「放課後」とか「先生」とか「机」とか「椅子」とかがフレーズの元になるアイテムになりますし、そこに「上司」とか「社長」とか「給与明細」とか出てきたらおかしいですよね。
しかし、それでは表現の幅に限界が出てしまいますし、面白くありません。そこで、これらの言葉を「代名詞」として置き換える事ができるように考えてみましょう。まぁ、端的に言ってしまえばただの「比喩」なんですが、ここを意識して出来るようになれば表現の幅はぐっと広がるはずです。
例えば、「給与明細」。労働の成果として渡される給与明細は、学業の成果として渡される「成績表」の代名詞に成り得ますね。別に成績表に限らなくてもテストの答案用紙でも良いですし、下駄箱の中に入ってるラブレターでも良いのです。重要なのは自分の中でそこにどのような関連性を見出し、代名詞として昇華できるかどうかなのです。
じゃあ今回は例文として特に音数とか気にせずに、この技を使うとどうなるか試してみましょう。
普通)先生から受け取った成績表を机にしまいこんだ
変換)社長から受け取った給与明細を鞄に投げ込んだ
代名詞に置換するだけで大分印象が変わりますね。でもこれだけだといまいち面白くありません。そこで、この「学校」と「会社」という異なる世界観を思い切ってごちゃ混ぜにしてしまおうというのが、「アッパーストラクチャーリリック(造語)」という概念なのです。試しにさっきの変換例を元にワンフレーズ組み立ててみましょう。
――社長から受け取る通知表 木目の机に投げ込んだ
――放課後のビルの窓際で 僕はまだ大人になれないでいる
うーん。いまひとつ!微妙なフレーズが出来てしまいましたが、これをやると何か独特な浮遊感が出てきますね。やりすぎるとリスナーは気味悪がってついてきてくれませんが、ここぞという場面でこの技がバシッっと決まるとなかなかかっこいいです。
んでんでんで、このカラフルという歌詞。もっと抽象的ではあるんですけど全体がこの「アッパーストラクチャーリリック(造語)」で出来ているんですよ。つまり二つ以上のの世界観が常に混在しているんですね。全然そんな風に見えませんよね。そこがこの歌詞の恐ろしいところなわけです。
つまり、「語り部のいるα世界観」と「語り部がα世界観から紐付けしたβ世界観」を織り交ぜて、新たに「γ世界観」というものを作り上げている。こうなるとどういう事が起こるかというとリスナーの目線からは「γ世界観」しか見えなくなるんですよね。だから先ほど例に挙げたフレーズのような独特な浮遊感を排除し、違和感を無くしつつ、ストレートな歌詞が書けるようになるわけです。しかし、その「γ世界観」は「α世界観」も「β世界観」も内包した世界観ですから、そこでの一挙手一投足に様々な意味を詰め込むことができる。つまり深みが増していくわけですね。変態ですね。
では、その技巧がこのカラフルにおいてどう活きてるかというと、もうとんでもないです。
前項で解説した暁美ほむらの転機についておさらいしていきましょう。
①魔法少女になる前に唯まどかを慕い側にいる事を大切にした。
②まどかを救うために自ら魔法少女となり、共に戦おうとした。
③まどかを救うために、自らもまどかから遠ざかり孤独に戦おうとした。
④概念と成り果ててしまったまどかの意思を尊重し、戦いの場に身を置く事を是とした。
⑤自らの意思で自分自身を孤独へと追いやったまどかを憎み、呪った。
⑥まどか(神)を汚し、悪魔となり敵対し、まどかの生きる世界を守る事を是とした。
これが、先ず語り部である暁美ほむらの保有する世界です。
劇場版の主題歌であるカラフルの語り部である暁美ほむらは間違いなく⑥でしょうね。つまり、この歌で表された心情というのはあくまでデビルほむほむの心理なのです。ここを取り違えると歌詞の解釈がカオスな事になるので間違えずにいきましょう。
「⑥の世界観」をベースにして代名詞として「①の世界観を基盤とした①~⑤の交じり合った世界」を用意して、「全く新しい世界観」を生み出しているわけです。少し分かりにくいのでテーブルマウンテンで拾ってきた合成の壷を用意しました。
ここに暁美ほむらがおるじゃろ?
( ^ω^)
⊃⑥①②③④⑤⊂
これを
( ^ω^)
⊃) (⊂
( ^ω^)
≡⊃⊂≡
こうじゃ…
( ^ω^)
⊃「デビルほむほむ+5」⊂
デビルほむほむ+5
―まどかに出会ったばかりの新鮮な心
―まどかと共に歩いていくという充実感
―まどかを守ってやるんだという強い意志
―愛するまどかの意思を重んじる心
―愛するまどかを愛ゆえに憎む心
つまり、希望と呪いを併せ持ち魔女という存在すら超越し、新しい世界を創造すらしたデビルほむほむの心境を、「まどかに出会ったばかりの新鮮な世界」に置き換えて歌っているわけです。それができるのは、全てが一貫してまどかを想う暁美ほむらの心境であるからであり、恐らく暁美ほむらにとっては自分の行動が何の矛盾も無く存在しているからであるでしょう。暁美ほむらにとってはまどかをインキュベーターの思惑から救う事も、まどかに反逆して新しい世界を創造してしまう事も同じ事なわけですね。
その上でカラフルの歌詞を振り返ってみると一気におぞましくなりますね。
例えば1Aの「強い意志」には「まどかを分離させて世界を書き換えてやる」という強い意思を感じますが、表面上は「まどかをインキュベーターから救ってみせるんだ」という強い意志に置き換えられています。
1サビの「触れた心は輝いた 鮮やかな色になって」というフレーズは、まどかと出会った頃の新鮮な喜びを表現しているようで、裏側では虹色に禍々しく輝くソウルジェムが見え隠れします。そう考えると、1Aのいつも「モノクロだった瞳」も、なんか七色にキラキラ輝いてるデビルほむほむの瞳が浮かんできてとても恐ろしくなりますね。
つまり、歌詞の世界観は「語り部の世界」と「語り部が置き換えた世界」が不可逆に圧縮された最大公約数的、或いは最大公倍数的な世界として位置づけられているわけですね。だから、どんな意味にでも変換できるわけです。しかし、そんな中でどうしても他の世界観では説明できないフレーズがあるわけです。それがこの曲の核であり、ベースとなった⑥の世界観のデビルほむほむそのものの心境であるわけですね。
そうそう、一つ忘れていました。カラフルにおいては「空」というのが一つのキーフレーズになっていますが、アニメ版の主題歌であったコネクトにもこの「空」というのが登場します。
――空はきれいな青さでいつも待っててくれる
――だから怖くない もう何があっても挫けない
どうみてもまどかの事ですね。本当にありがとうございました。
つまり、カラフルで書かれた「空」もまたまどかを暗示させる存在であるわけですね。
――無限に広がる空の下集まった
――願い守り進めば
だから、カラフルにおけるこのフレーズは「まどかのために重ねた想い」と変換できるわけですね。願いとはつまり、まどかに宛てた愛しさであり、憎しみであり、愛であるわけです。そんな事一言も書いてないんですけどね!これが、世界観の統一により得られる効果であるわけです。超高等超絶技法にもほどがありますね。頭痛くなってきました。何が凄いってそんな複雑で猥雑な作業を経てできた歌が、一見何の変哲も無い「夢と希望の歌」であるという点です。これは何に置いても言える事ですけど、優れた作品ほど、一見すれば普通の作品に見えてしまうのです。プロってみんなこんな生き物なんでしょうか。はわわわわ。
さてさて、あくまで補足的な内容でしたので今回はこれぐらいで引き上げようかと思います。世界に心揺さぶる素晴らしい歌詞がある以上、鶏さんはまた現れるかもしれません。それでは結局前後編となってしまったカラフル考察これにて終幕です。くぅ~疲れました(
それでは、まどか達のみんなへのメッセジはありませんが、皆様の歌詞書きライフに素晴らしきソウルジェムの輝きがあらんことをお祈りして撤収致します。お疲れ様でした。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想