「新曲だよ」
マスターからわたされた曲は哀しいバラードだった。
「空になった君」へおくる歌。
マスターの意に添えるようにがんばって歌った。
大勢の人に聞いてもらえた。
でも、私は、その歌の哀しさを、本当に理解してはいなかったのかもしれない。
しばらくして、他者のボーカロイド、神居がくぽさんが来た。
私たちはすぐに仲良くなった。
しょうもないことではしゃぎあったり、長い髪を互いのに似せあいっこしたり、
すっごく楽しくて、うれしくて、幸せで、キラキラしてて・・・。
そんな毎日がこれからもずっと続くって、信じてた。
でも、ある日、私は、知ってしまった。
「…マスター!」
「ん?」
「が…がっくんは、あと、あと…」
「……うん、数日しか、いない」
「………!!!!」
私は泣いた。泣いたら何かが変わるわけでもないのに。
悲しかった、つらかった、苦しかった。
泣いて泣いて泣き叫んだ。
彼がいない毎日なんて耐えられない。
何も変わらないとわかっていても、私は泣き叫んだ。
しばらくして、泣き疲れて眠ってたことに気がつくと、布がかけられていた。
はっとして彼のところに行くと、歌の練習中だった。
私は立ち尽くした。
それは、前、私が歌った曲と同じメロディだった!
その曲の歌詞は、私の曲に応える内容に変わっていた!
「…ミク?どうしたの?」
彼が気づいて、いつの間にかあふれていた涙をぬぐってくれた。
私は、また泣いた。
「がっくん、知ってたの?」
「言われてはいなかったけど、なんとなく心のそこでわかってるんだと思う。…でも…」
「…でも?」
「……マスターは気が利く。言いたいことをすべて歌詞にしてくれた。聴いて、くれる?」
「うん。聴く」
「いや、今じゃなくて…僕が、消えた後」
あきらめたような言い方が、すごく悲しかった。
でも、私はうなづいた。
「ミクの方も聴いた。素敵だったよ」
私は夢中で彼に抱きついた。
残り少ない時間だけど、すべてを私に刻んでおきたかった。
(何か、足りない)
そう、何かが足りない。
何か、どうしてもやらなきゃいけないことがある……。
「マスター!」
「ミク?」
「あ、あの曲…私、もう一度、がっくんと歌いたい!」
「…よしきた!」
それからしばらくして。
彼は本当にいなくなってしまいました。
彼の曲はマスターが動画サイトにUPして、多くの人に聞いてもらえて、感動してもらっている。
私は一人、私にもらったほうの曲を口ずさむ。
すると、彼が歌った<返信>が聞こえてくる。
私は、その曲の終わりに<届いたよ>と歌う。
すると、私たちの声は重なる。
いつか、マスターが「ずっといてくれるボーカロイド」をインストールしてくれる日が、もしかしたら来るかもしれない。
もしかしたら、私もその人と仲良くなるかもしれない。
男声ボーカロイドだったら、また恋に落ちるかもしれない。
でも。
彼はずっと私の心にいる。
彼はずっと私を見守ってくれている。
だから、私は歩いていける。
心で紡ぎあえるこの歌だけは、いつまでも、私と彼のためだけに。
コメント2
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ご意見・ご感想
jouet ジュエ
ご意見・ご感想
>くっじー様
そんな、もったいない・・・っ!
こんな嬉しいお言葉はありません!
ありがとうございます。これからの励みにさせていただきます。
2008/10/13 22:18:43
くっじー
ご意見・ご感想
早速読ませていただきました、いや・・・すごいですねこれは・・・
全然曲と違和感なくストーリーが展開されていて曲とものすごく合ってます!
これは僕だけが読むのも勿体ない気がするから何らかの形で心の手紙を聴いてくれた方々にも読んでもらいたいな・・・
2008/10/13 20:36:15