少女は絵本を開く
綺麗に描かれた王子様に 胸ときめかせて
隣で微笑むお姫様に ちょっと嫉妬したりして

少女は絵本をめくる
お姫様は少し あたしに似ているかしら
王子様とお姫様は この先どうなるのかしら

物語は進む
『王子様は、とうとう捕らわれのお姫様を救い出したのでした』
そして いよいよハッピーエンド その刹那

キロリ

絵本の中の王子様の瞳だけが 「あたし」に向かって動いた気がした



王子様の 口が動く
『僕は、ずっと貴女を見ていましたよ』

・・・王子様はお姫様を見ていない・・・

その刹那
くるり
世界が回転する



現(うつつ)は夢へ 夢は現(うつつ)へ
絵本の中のお姫様の姿だけが 「あたし」の姿と入れ替わる



お姫様は絵本を開く
はらはらと涙をこぼしながら

王子様 王子様 「私」を見てください
あなたの隣にいたのは「私」
あなたに恋をしたのは ほかの誰でもない
ここにいる「私」
あなたと紡いだこの物語を こんな風に終わらせないで


少女は「私」の声を聞く
ぽたぽたと涙をこぼしながら

王子様 王子様 「彼女」の声を聞いてください
「彼女」が幸せであれば 「あたし」も幸せになれた
こんなのは違う
あたしが望んだ結末は 決して こんなことではない
「彼女」と紡いだこの物語を こんな風には終わらせないで


光が消えた 王子様の瞳
綺麗に描かれた 張り付いた笑顔

和する声

届かない言葉ならば せめて祈りましょう
あなたがいつか好きだと言った 私の声 高らかに張り
今一度だけ 貴方のためだけに唄いましょう
いつでもいい いつか貴方に 届くように

それでも貴方と過ごした日々 ワタシはとても幸せでした
貴方との思い出ひとつひとつが ワタシにとっては大切な宝物
「好き」と呟いた言葉も 「笑顔を見たい」と願った心も
それだけは紛れもない真実だから

けれど
「あたし」は 夢(ここ)では生きられない
「私」は 現(ここ)では生きられない
だから どうか
ここまで紡いだこの物語を このままで終わらせないで



ぐにゃり
涙で歪む 王子様の姿
刹那
くるり
世界が回転する



少女は絵本を開く
最後のページだけは二度と開かないよう 固く固く貼りあわせ
王子様の隣 お姫様の 幸せそうな笑顔に安堵の笑みを浮かべて

少女は幾度も絵本をめくる
お姫様は少し あたしに似ているかしら
お姫様は王子様と 幸せでいるかしら

そして少女は絵本を閉じる
絵本はまたいつものごとく 大切に本棚にしまわれる



めでたし めでたし

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

そして少女は絵本を開く

 危険!
 夢に現実を持ち込まない
 現実に夢を持ち込まない

 そんなプチホラー。
 うん。
 見えないけど、ホラー。

 そんな小説を書くつもりなプロット。
 熟成が必要っぽいので、ラップをかけて数ヶ月ばかり、ここに保存しておきます。
 もちろん比喩表現なので、まったく違う舞台設計になるはずですが。
 ・・・ということを忘れないように>数ヵ月後の自分
 

閲覧数:147

投稿日:2010/04/08 14:44:08

文字数:1,085文字

カテゴリ:その他

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  • wanita

    wanita

    ご意見・ご感想

    1ページに含まれた、この濃密な展開に惹かれてブックマークさせていただきました。
    光の見えるエンディングで、本当に良かった……!
    ではまた遊びに来ます♪

    2011/06/04 14:50:16

    • 茶撫子

      茶撫子

      > wanita さん
       うわぁぁぁ!!!ありがとうございます!
       一年以上前に投稿した、こっぱずかしい作品(笑)感想いただけて、とても嬉しいです!!

       最近ピアプロは放置気味ですが、再開の暁にはまたよろしくお願いしますm(_ _)m

      2011/06/06 22:23:08

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