昔、蒼き侍という者がいた
彼は幼き妹を連れ
雨の日に 花と散った
両親の 仇の為
一切の 迷いはなかった
道を行けば 外道
前を向けば 毒蜘蛛(どくも)
彼は いつしか 人切りと
世に広まり 賞金かけられ
彼らは 命を狙われた
眼の見えない 幼き妹は
兄の涙をまだ知らない
昔、緑の髪の長い妹を
人切りは大切にしていた
眼も見えず 口も訊けず
唯、兄に微笑むだけ
一切の 穢れ(けがれ)はなかった
下を視るな 我よ
死するなかれ 君よ
彼は 仇と 偽った
血に染まった 我の手とともに
彼らは 偽りを信じた
眼の見えない 幼き妹を
兄は抱くことさえ できずに
鞘をとれよ 己
剣をかまえ 夜叉よ
我は 情など 臆(おく)しない
己は仇 我ら両親の
彼の 苦しみの紐は解け
止まぬ雨に 涙
鞘にしまう 剣に
彼は いつでも 慣れないで
雨に混じり 流れる涙を
拭うは 指を這わす妹
膝をついた兄と並んで立つ
妹に兄は抱きついた
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