ロボトミー
A
馬鹿げたおかしな頭
穴を空けてしまいましょ
冷たい金属で
繋がりを断ち切りましょ
騒ぐな五月蝿い黙れ
パパはいつも怒鳴るから
わたしは悲しいの
助けてねお医者さま
心は胸にある
そう思っていたけれど
どうやら 間違いね
わたし なくしちゃった
ほんとはなくしたくない
大事なわたしの心
でもそれじゃあだめ
大好きなパパのために
B
寝不足頭
ぐるり
眼が覚めないの
ふらり
寝ても覚めても
まるでおなじ
わたしは夢の中
S
手を握ってほしかった
ただそれだけを望んでいた
たとえその手が怖く
痛くわたし叩くものであっても
A２
これでうまくいったかな
わたしなにも感じない
青く遠い海に
夕焼けが輝いても
人間やめたみたいね
パパは喜んでくれた
わたしとても静か
ずっと壁をみつめてる
どうしてこんなこと
隙間のあいた頭に
鉛のような黒
支離滅裂にまわるの
壁のしみが動きだす
床がふやけて溶けだす
心臓がうるさい
静かにして眠れない
B２
お願いこの手
とって
頭を撫でて
ねえ
おかしいだなんて
言わないでよ
わたしを愛してよ
S
探して伸ばした手が
見つけたの新しい道を
一度なくしてしまった
わたし生きるための世界 取り戻す
C
パパのことが 大好きなの
ずっとおてて 繋ぎたいわ
硬く白い 骨でもいい
わたしの手を 離さないで
お医者さまはおばかさん
わたしに嘘をついたわ
ねえパパはどうして
お見舞いに来ないのかな
壁のしみが嗤う
わたしはもう人じゃない
生きる意味が無いと
なくした心が腐る
サビ
金属が まだいるの
わたしのなかで光っている
なくしちゃった心の
代わり きらり 尖り うねる
しずかにしろ
うるさいわ 誰なのよ
わたしじゃない パパでしょう
静かにしなきゃだめ
わたし 穴を 埋める 塞ぐ
これがしあわせ
A3
聞き取れない声響き
怖い顔をしたママが
受話器を手に取った
電話線はもう切った
ねえきいてよママわたし
とてもとてもいい子でしょ
ねえなんでどうして
そんな顔をするのかな
いじくった頭と
なくしたはずの心が
不自然に傾く
わたしだけがここにいる
パパの手を握りたくて
ママに笑ってほしくて
両手を伸ばした
白くて静かで素敵
ひらがなバージョン
ロボトミー
A１
ばかげたおかしなあたま
あなをあけてしまいましょ
つめたいきんぞくで
つながりをたちきりましょ
さわぐなうるさいだまれ
パパはいつもどなるから
わたしはかなしいの
たすけてねおいしゃさま
こころはむねにある
そうおもっていたけれど
どうやらまちがいね
わたし なくしちゃった
ほんとはなくしたくない
だいじなわたしのこころ
でもそれじゃあだめ
だいすきなパパのために
B１
ねぶそくあたま
ぐるり
めがさめないの
ふらり
ねてもさめても
まるでおなじ
わたしはゆめのなか
S
てをにぎってほしかった
ただそれだけをのぞんでいた
たとえそのてがこわく
いたくわたしたたくものであっても
A２
これでうまくいったかな
わたしなにもかんじない
あおくとおいうみに
ゆうやけがかがやいても
にんげんやめたみたいね
パパはよろこんでくれた
わたしとてもしずか
ずっとかべをみつめてる
どうしてこんなこと
すきまのあいたあたまに
なまりのようなくろ
しりめつれつにまわるの
かべのしみがうごきだす
ゆかがふやけてとけだす
しんぞうがうるさい
しずかにしてねむれない
B２
おねがいこのて
とって
あたまをなでて
ねえ
おかしいだなんて
いわないでよ
わたしをあいしてよ
S
さがしてのばしたてが
みつけたのあたらしいみちを
いちどなくしてしまった
わたしいきるためのせかい とりもどす
C
パパのことが だいすきなの
ずっとおてて つなぎたいわ
かたくしろい ほねでもいい
わたしのてを はなさないで
おいしゃさまはおばかさん
わたしにうそをついたわ
ねえパパはどうして
おみまいにこないのかな
かべのしみがわらう
わたしはもうひとじゃない
いきるいみがないと
なくしたこころがくさる
S
きんぞくが まだいるの
わたしのなかでひかっている
なくしちゃったこころの
かわりきらりとがりうねる
しずかにしろ
うるさいわ だれなのよ
わたしじゃない パパでしょう
しずかにしなきゃだめ
わたし
あなを
うめる
ふさぐ
これがしあわせ
A3
ききとれないこえひびき
こわいかおをしたママが
じゅわきをてにとった
でんわせんはもうきった
ねえきいてよママわたし
とてもとてもいいこでしょ
ねえなんでどうして
そんなかおをするのかな
いじくったあたまと
なくしたはずのこころが
ふしぜんにかたむく
わたしだけがここにいる
パパのてをにぎりたくて
ママにわらってほしくて
りょうてをのばした
しろくてしずかですてき
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