※これはmothy-悪ノP様の「悪ノ召使」「悪ノ娘」を元にした小説です。
先にこの二つをご視聴なさることをお勧めします。
※作品、作者様とは一切関係ありません。
※捏造設定を多大に含みます。
※小説とか殆ど書いたことが無いので変なところがあってもご容赦を。
※無駄に長いです。
※メイコの喋り方がおかしいです。
それでも許せる方のみどうぞ↓
謁見の間への道順は覚えていた。考える間もなく体が勝手に動く。
伴った兵士達も付いて来られぬ速さで城の中を駆け抜けると、その扉を開けた。
その少女は、怯えの色などは少しも出さず、ただ静かに玉座に座していた。
無礼にも取次ぎも無しにこの謁見の間へと踏み込んできたにも関わらず、
その威厳に満ちた姿に私は一瞬気後れしてしまった。
「この無礼者」
言葉とは裏腹に、その声は酷く落ち着いていた。
私は玉座の近くまで行き、礼儀通りに床に片膝を付き、跪いて頭を垂れ言った。
「ご無礼をお許し下さい王女様。今日はお願いがあって参りました。
私達と一緒に来ていただけますでしょうか」
―悪ノ国<前編>―
広場からは人々の楽しそうな笑い声や歌声が聞こえてくる。
もう夜中の0時を回ったというのに、外では煌々と明かりが灯され、
まるで昼間のような明るさだ。
長きにわたる抑圧と戦いの日々からついに解放されたのだ。
開放的な気分になるのは無理も無い。お祭り騒ぎは朝まで続くことだろう。
そんな喧騒とは少し離れた場所、城の裏手には月の光に照らされぼんやりと浮か
び上がる白い薔薇の庭園があった。
その庭園に、そこにはおよそ不似合いな真紅に輝く鎧を纏った女性が佇んでいた。
彼女の名はメイコ。民衆を率いて戦い、この国を滅ぼした張本人である。
長きにわたる戦いを終え勝利を収めたにも関わらず、彼女の顔に浮かぶのは喜び
や達成感に満ちた顔とは程遠い、なんとも形容しがたい複雑な表情であった。
「こんなところにいらっしゃったのですか」
一人の兵士がやってきて彼女に声をかけた。
「ああ、お前か」
彼はこの戦いが始まった当初から彼女に付き従っていた、信頼できる戦友であった。
「兵士達が寂しがっていましたよ。貴方が居ないとせっかくのエールも不味くなると、ね」
「嘘を言え、私が居なくても随分と盛り上がっているようではないか。馬鹿騒ぎの
声が此処まで聞こえてくるぞ」
「ははは、バレましたか」
軽口を叩きながら、彼はメイコにエールがたっぷりと入ったジョッキを差し出した。
メイコはそれを受け取り、軽く呷ると空を見上げた。
空には大きな月が輝いていた。今日は満月だ。
「随分と浮かない顔ですね。やっと勝利を収めたというのに」
「・・・多くの犠牲を払ってな」
「そうですね・・。だからこそこれからはそのような犠牲を出さない世界を作らなければ
ならない。そうでしょう?」
「そうだな」
その為にはもう一人犠牲を出さなければならない・・・。
メイコは心の中で思ったが口には出さなかった。
「浮かない理由はもうひとつあるんだ」
「なんですか」
「昔の事を思い出していた」
「・・・お父様のことですか」
随分昔に彼女から聞いたことがあった。彼女の父親はこの国によって命が奪われた、と。
それがこの戦いに身を投じる原因になったと。
「まあ、そんなところだ」
そういうとメイコは一口エールを呷り、再び月が輝く空を見上げた。
なんとなくこれ以上は話たくないのだろうという雰囲気を感じ取り、
兵士は黙ってエールを呷り、共に空を見上げた。満月がとても綺麗だ。
広場からは未だ愉快そうな声が聞こえてくるが、此処にはそれからは隔絶したような静けさが漂っていた。
「さて、今日中に済ませておかなければな」
しばらく黙っていたメイコが突然言った。
「何かありましたでしょうか?なにも今日でなくてもよろしいのでは」
「今日でなくてはいけないのだ。これ以上後回しにするわけにはいかない」
「それは一体・・?」
「王女様に話がある。お前に命令だ、私が戻るまで王女の独房には誰も近づけるな」
そういうとメイコは足早に城の中に入って行った。
兵士は一瞬あっけにとられたが、すぐにメイコの背中を追った。
「しかし、王女は貴方の命令で身体検査などは行っておりません。もし何か隠し持っていて、
貴方に何かあったら・・・」
「私はそんなに弱くはない。私が信用出来ないのか」
メイコは歩を緩めずに答えた。
「万が一ということもあります!今貴方を失ったら大変なことになります。
それにやはり自害の心配もありますし、やはり身体検査を行うべきではないでしょうか」
その言葉に、メイコはようやく立ち止まり、振り向いて言った。
「その必要は無い。自害の心配も無い。
"彼女"は自らの意思で此処に残ったんだ。お前はまさか私の命令が聞けないのか」
確信に満ちたその言葉に、兵士は思わずひるむ。
「そ、そのようなことは・・・」
「ならば命令だ。誰も近づけるな」
有無を言わせぬ調子でそういうと、メイコは再び背を向け廊下を早足で進んでいった。
残された兵士は一人廊下に佇んでいた。
冷たい石が敷き詰めた廊下に松明の火が弾けるパチパチという音が反響する。
遠くからはお祭り騒ぎの声がわずかに聞こえてきた。
命令を遂行する為に、彼女の後を追わなければならないとは分かっていたが、
彼はある疑問に囚われその場から少しも動くことが出来なかった。
彼女の命令に、違和感を感じていた。
「貴方はこの城に来たときに、迷うことなく進んでいった。まるで、この城を良く知っているかのように」
兵士は誰に聞こえるでもない声で一人ごちた。
「私は貴方を信じている。しかし・・・」
兵士はメイコが去った方向の廊下をみつめた。
松明の明かりにぼんやりと照らされてはいるものの、奥は暗闇に埋まり、全く見えなかった。
「メイコ、貴方は一体誰なんです・・・?」
そう呟いた兵士の言葉は、分厚い石壁に反響することなく消えていった。
------------------------------------------------
その部屋は城の最上階にあった。
唯一の出入り口である狭い階段を上ると小さいが頑丈そうな扉が見える。
この部屋が何のために作られたのか、メイコは知らない。
階段への入り口は巧妙に隠されていたため、おそらく秘密裏に誰かを匿う為に作られたものだろう。
それとも、監禁するためだろうか。
そんなことを考えながら狭くて急な階段を上っていくと、小さな扉の前に立つ兵士の姿が見えた。
突然現れたメイコに驚きの表情を浮かべる兵士を有無を言わさぬ命令で下がらせた。
兵士は釈然としない顔をしながらも、メイコの命令には逆らえない。
メイコのこの統率力があったからこそ、この戦いに勝利を収めることが出来たのだ。
「お入りなさい」
扉をノックをすると、中からの声が応えた。
静かに扉を開けると重い木の扉が軋む音がする。
部屋の中は埃っぽく至るところに蜘蛛の巣が張っていた。
そんな部屋の様子に不快な様子を見せることなく、少女は唯一の小さな窓の傍に座っていた。
窓の外には、広場で楽しむ民衆達が見えた。
「今日は随分とにぎやかね。お祭りなのかしら」
その声は以前と同じく随分と落ち着いていたが、謁見の間で聞いたような威厳に満ちた響きはなく、
むしろ歳相応の少女のようなあどけなさがあった。
その様子を見てメイコは複雑な笑みを浮かべると静かに言った。
「仮面、似合って無いわよ、色男さん」
後編に続く
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タラバ
!!CAUTION!!
神曲の【悪ノ召使】の二次創作替え歌です。
うp主はmonthy様と全然関係ない人間です。
彼は王女 彼女は救世主
運命分かつ 悲しき双子
彼らを照らす その為ならば
わたし太陽になってやる
光の中わたしは生まれた
祝福するは愛すべき民
十八歳の誕生日...二次創作【光ノ姫】
llliii
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ご意見・ご感想
りあき
ご意見・ご感想
ご意見ありがとうございます^^
ご指摘して頂いた点は一応修正させていただきました。
文章書きなれていないのがバレバレでお恥ずかしい限りですorz
後編は前編の後にすぐにupする予定だったのですが、
当初考えていた設定が自分の中で二転三転してしまって遅れてます。
でも、読んでいただいた方がいらっしゃるとわかったので
頑張って書かせて頂こうと思います><
貴重なご意見ありがとうございました。
2008/06/09 00:01:48
gatsutaka
ご意見・ご感想
「悪ノ国」面白いですよ。メイコの喋りも別段おかしくないし。
後編楽しみにしています。
後編まで読んで、機会があったら感想書かせてもらいます。
で、これどうしようか迷ったのですが、2点ほど言いがかりを。
・「道程」は距離を表す言葉なので、この文脈ではちょっと変かな。
・「酷く」はよくないことを強調する意味が強いので、別の副詞か、あえて使うなら「ひどく」がいいかも。
気を悪くされたらごめんなさい。m(_ _)m
2008/06/08 22:57:36