再会【連作戯曲】
ある国の、歌姫の物語。
「再会」
その夜もまた、月の欠けた夜でした
あれから僕も 少し変わった もう泣いたりしないよ
今ならあのフェンスも 越えられる 諦めたりはしない
あの日 交わした小指 遅くなったけれども
今、果たしにいくから すべて なぎ払って・・・
僕ら 凍てついた季節を終えて ふたりでまた 春の空、歌おう
君と僕の手を 重ねれば、ほら 幸せもつかめるかもしれないよ
「どうやら侵入者は、【失敗作】のようです」
「何人か、やられているようですな」
「まさか、生きていたとはな・・・」
「いかがいたしましょう?」
「構わん、殺してしまえ」
離れていた時間の 寂しさも これからふたりで 埋めていける
幼き日々の あの歌のように 僕ら、すべて 分かちあっていけるから
信じていたよ きっとまた会えると 心の中で繋がっているから
もう何が邪魔しても 離(さ/れ)ない ふたりなら 何もかも乗り越えられる
「う、そ・・・」
「やくそく、しただろ?」
「・・・ばかあ・・・」
「さ、いこう・・・っ」
「う、ん・・・?」
少女は、少年の背中越しに科学者たちを見ました
そして、少女の瞳に、異色の光が宿りました・・・
「ゆるさない・・・!」
「・・・ごめん・・・いっしょに、いけない、や」
「うん・・・」
「やっと・・・あえた、のに」
「うん・・・ありがとう・・・」
「ねえ・・・うた、うたってよ」
たとえば誰かが ふたりのことを 引き裂いても 離れはしないよ
繋いだ手だけじゃなく もっと深く 心の中 繋がってるから・・・
「ほら・・・てのおおきさも、こんなにちがうよ・・・?
・・・ゆっくり、おやすみ」
少年は、笑みを浮べて目を閉じました
そして、朝が来ました・・・
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