西の大国から北東に進めば
其処には魔物と悪魔の住処 禁断の森
禁断の森には〝楽園〟(エデン)が存在するという
翡翠の髪に白皙(はくせき)の肌 スラリと長い手足にパッチリ開いた大きな瞳
その美貌の麗人こそが 紛れも無い〝楽園〟

〝楽園〟は知恵のみをもぎ取り 一口二口三口と齧る
知恵のみの味は禁断の味 麻薬のような〝楽園〟の味
〝楽園〟は一つもぎ取り魔物に与え 一つもぎ取り悪魔に与え
一つもぎ取り地面に植えた 知恵のみは一瞬にして芽吹き育ち大樹となり
知恵のみを実らせた
〝楽園〟は望まれるままにもぎ取り 魔物と悪魔に分け与えた
〝楽園〟は迷路のように入り組んだ森と 魔物と悪魔に守られて
穏やかな日々を過ごす

けれど西の大国が 〝楽園〟を求めて攻め入ってきた
森は焼かれながらも道阻み 魔物は軍隊のような正確さで人間に飛び掛る
悪魔は地獄の扉をこじ開け 更なる仲間を呼び寄せる
まさしく地獄 人間の身勝手な理由によって 〝楽園〟の心は傷ついた
自分の可愛い子供たちを 薄汚いイヴとアダムの種族が傷つけた
苛烈な怨嗟(えんさ)と憤怒の炎をその瞳に宿して 〝楽園〟は呪をかけた
人間が禁断の森に足を踏み入れたが最後 地獄の業火に焼かれて死ぬと

間もなく攻め入ってきた人間全員が 喘ぎ苦しみ悲痛の表情で喉を掻き毟り死んだ
その全てを見届けて 〝楽園〟は実っている知恵のみを全てもぎ取り
焼け爛れた木々の根元に植えて 傷ついた魔物と悪魔に与えていった
そうして今も禁断の森はそこにある
禁断の森の奥の奥 迷路のような森と 魔物と悪魔に守られて
〝楽園〟は今も その森に

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

楽園

短い、かな?
不快な単語が入っているかも知れませんが、ご了承を
書いてる本人は楽しかった

閲覧数:82

投稿日:2008/05/12 21:15:24

文字数:684文字

カテゴリ:その他

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