忘れられてた 時計が今動き出す
取り戻せない 時を刻むように
忘れられてた 思いが今浮かびだす
取り戻せない 未来-イマ-を探すように

春の若葉ゆらめくあの平原で
花冠編む恋人の笑顔
夏の香りが広がる向日葵の丘
何もかもを失った男の譚-はなし-

その手の刃を振りかざしてまで 何を断ち切るのだろうか
得られるものなど 何も在りはしないというのに
その手に握っている 剣を振り下ろして
戻れぬ路の先に罪を一つ背負う

忘れられてた 時計が針を止める
取り戻したい 時を哂うように
忘れられてた 業-カルマ-が足を止める
取り戻したい 過去-イマ-を嬲るように

秋の山に色めくあの木々のように
赤き装束-ころも-を身に纏いし者
冬の白を塗りつぶす寒椿の花
何もかもを奪い去る死神の譚-はなし-

その手を今も赤く染め上げて 何を潤すのだろうか
癒せる渇きなどは 在りはしないといいうのに
その手が濡れるたびに 知らず涙を流し
戻れぬ果ての先に罰を一つ乗せる

生-あさ-を望まない罪 死-よる-を望む罰
背負い乗せ行く曼珠沙華の花
忘れられない想いが心まで壊す
喜劇にもなりきれない男の悲劇-はなし-

その身を今は刃に貫かれ 何を望むのだろうか
果たせた願いもすでに許されぬというのに
その身の剣-ぼひょう-を伝い 命が流れ落ち
サイハテ 眠る此処に罪と罰だけ残る