「壊れた自鳴琴」
ある骨董屋の店主から譲り受けた
壊れた《自鳴琴》
少女はそれを大事そうに腕に抱き
家路に着く―――
(Lu La Lu La La ...)
開ける度に変わる《歌》
すすり泣く少女の声
例えるなら そう
葬列の中に佇む花売りの娘
何が悲しいのかしら
壊れた《自鳴琴》 → 《歌》を紡ぎ続ける
閉じられた棺(はこ) → 広がるのは静寂
二度と同じ《旋律》を奏でない《自鳴琴》
少女にとってそれは新しい玩具
誰もいない部屋で
少女は一人 蓋を開く―――
開ける度に変わる《唄》
響き渡る双つ(ふたつ)の声
例えるなら そう
旅芸人の楽しい客寄せの回旋曲(ロンド)
何が楽しいのかしら
壊れた《自鳴琴》 → 《唄》を紡ぎ続ける
開かれた腕(まく) → 広がるのは歓楽
幾度も変わり続ける《自鳴琴》の音
少女はその《転調》に夢中
そうして何度目かの夜を迎えた時
其れは 目覚める―――
(La Lu La Lu Lu...)
開ける度に変わる《詩》
籠から廻る孤独な声
例えるなら そう
堅城の果てに幽閉された王女
何が苦しいのかしら
壊れた《自鳴琴》 → 《詩》を紡ぎ続ける
聴こえる音(うた) → 広がるのは羨望
(La La La La La...!)
壊れた《自鳴琴》 → 《音》を紡ぎ続ける
消え逝く魂(おと) → 広がるのは波紋
嗚呼 壊れた《自鳴琴》は
何を紡ぎ続けるのか―――
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